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おじんバッシング/98/1月号
あんさんバスやったことありまっか。乗合バスとちゃいまっせ、ルアー振り回す奴ですねん。バスプロにはもとサーファーが多いんやそうでんな、何でやて、わてに聞かれても知りまへんわ。バスプロと呼ばれる名人にはなんでかハゲ爺いはいてまへんな、そやけど茶髪が目立ちまんなあ。高価なタックル、一流アウトドアブランドの服装、4WD車と米国製ボートをお持ちやそうで。なかには豪勢なキャンピングカー引っ張って来よんのもいてまんが。釣り業界は不況知らずや言うてまっけど、彼らは何であんなにリッチなんか不思議でんなあ。昔気質の釣り名人は世捨て人でしたな、清貧洗うがごとく、春夏秋冬飄々として仙人のように風に吹かれてる後ろ姿には後光がさしとりましたなあ。同じ釣人やのにイメージが全然ちゃうやん、そな思えへん? また何でも横文字で言いたがりまんねんな、まるで巨人の長島監督みたいでんなあ。素直に日本語で言うたらよろしいのに、なんやかっこ悪りいと思とるんでっしゃろか、わざわざカナ言葉使うて、「アプローチはレイクによる。クリアレイクはロングディスタンスのピッチングやフリッピンで攻める、ガードつきのラバージグでのリーズの釣りはエッジ、ややインサイドのウェッピンで、攻めるスーパーインサイドポケットとシーズンによって入り込む深さをジャッジしてルアーをプレゼンテーションする」分かりまっか、これは一般的なバス釣りの入門書から抜粋してんけど、編集部の髪切り淳ちゃんに解説してもらわな日本男子のおいやんには全然通じまへんなあ。こなひどいカタカナ本の入門書が罷り通るバス釣りって何ですのん、漢字のルビ振ってもらわな理解できしまへん。えらい時代になってしもて、わて、長生きし過ぎましたかのう。 年寄りは新しもんは苦手でんね、特にカタカナ文はあきまへんわ。機械のマニュアルなんぞよう読まへんからパソコンは鬼門やわ。インターネットなんぞ問題外や。わての仲間なんぞパソコンどころかいまだにビデオの予約がややこしゅうて、ようせん言うてますねん。阪神戦を録画したつもりが、チャンネル間違うて巨人戦が入ってたとかで泣きよんね、この男、松井のホームラン見てアトピイが再発したちゅうくらいアンチ巨人ですねん。もっと簡単なのおせたって下さい。なんやお宅も機械に弱いてか、それが普通でんね、なんもいじけることあらへんで。なのに、カタカナ文化のバスフィッシングに挑戦してみいひんかなんて誰かが言い出して大騒ぎ、無理や、おじんのバッシングは笑い物になるだけやで、と言うたらバスプロになって賞金稼ぐんじゃ言いよりまんね。思わず顔見てしもたがな。本気で言うとんのでっせ、わてもアホやけど上手く乗せられましてな、成り行きでほなちょっとやってみよか、て事になってしもたんですわ。 まんず、道具買うのがえらいことでんが、店員の説明が分かりまへんが、竿一つ選ぶんが「ロッドのテーパーはミディアムでっか」「いいや、レアが好きでんね」「ちゃいまんが、ファースト、ミディアム、スローとおますねん…」やて、なんで竿の調子は先調子、胴調子、本調子と言えんのでっしゃろ。ほんまけったいでんなあ。万事この調子なんよ、日本語に訳したらどうって事ない釣り用語ですやん、かっこつけるなっちゅうの。最近の釣具屋もスーパー並みの大店舗でんが。バス組、海組、渓流組に分かれとって、そこにおる客層がおもろいことに年齢層で分かれとりまんなあ。バス組にはおじんはおらんわ、圧倒的に子供か若い兄ちゃんでんな。釣り言うたらバスと言う若い層に支持されとるもんやから、21世紀の釣りはルアー全盛時代に変わって行きまんのやろなあ。わてらが最後の漢字でやる釣り世代になんのやろか? 寂しいのう。 バス釣りにはなんやけったいな疑似餌が要りまっしゃろ、ビラビラの付いたぁるのとか、太いミミズ、どじょうに似てるのとか派手な色付きや、ラメ入りのピンク!なんじゃこりゃ。バスはおみずが好みなんか。そらやばいで、おみずの女はやめときや、おっさんが若い娘にもてるのは金が続く間だけやでぇ、勘違いすんなよ。言うても無駄か・・・ま、苦労して必要やろと思うもんを買い揃えて、約束の日曜日行きましたがな。三田市の郊外にある青野ダム、別名、千丈寺湖に集合しましたんや、道具も何を持って行ったらええのか分からんおっちゃんばかし四人も集まって、人の道具と見比べてこれ何んや、こんなんも要るんか、なんて文句多い多い。ダムに着いたらまず釣人の多いのにたまげましたわ。まるで鮎の解禁日と同じやがな、この寒い中ウェーダー着て立込みで漬かっとう人もいてまんねん、根性釣りやな。ゴムボート浮かべて震えながら釣っとんのもいとる。 「人のおらんとこ探そ」シャイでんね、自信おまへんよって。さんざっぱら藪こぎしてやっと見つけた人の居らん場所は湿原みたいな所、浮島が点々とあり、その下が魚の好きそうなとこや。買ったばかしのロッドにリールをセット、全員磯釣り用のリールそのままご使用。「ふかせの仕掛と同じでええねんな」「こういうのスプリットショットちゅうねん」「九条のストリップはえかったなあ、入場料千円の時は友達に電話してなあ」「そや、八百円の日はちらりで、千円やったらスッポンポンや」週一回は通っとった奴の呟きに共感しきり。「中通しの錘を餌の前につけたんはテキサスリグちゅうねん」「ほう、餌の後ろにつければニューヨーク言うんやろ」「なんでや・・」「おさきに、入浴なんて」「アホ、そんなギャグではこけんぞ」 ここまではまあまあでしたんや。1時間経過、釣信なし、2時間経過、なあんもなし。キャストで腕が痛うなっても当たりすらないが、どないなっとんねん。学生みたいな若い兄ちゃんが二人わてらの間に割り込んで来よった。なんやこいつら。「おい、黙って投げるな、そこはわしの糸が入っとるとこやないか」「はぁ」「はぁやあれへんがな、お祭りになるやないか」当たりのない友人が子供相手に怒鳴っとる。「まあまあ、君も人がやっとる所へ割り込むのあかんで、ちゃんと断ってからにしいや」「はぁ」二人は不承不承リールを巻いて移動してった。「マナー以前の連中がおるから頭くる」「子供やないか、教えてやるのが大人やろが」追っ払われた兄ちゃん達は、わてらがさっき諦めた場所でロッド振り始めた。「そこはおらんで」と言うたとたんに水面を割ってでかいバス上げよった。わしら茫然、なんでや。「ここはよう来るんか」「初めてですねん」「・・・・」話しながらまた当たりや、なんや入れ食い状態やんか、参ったね。彼らは手早くリリースすると、藪をかき分けて消えてしまった。 「腕はわしらより上らしいな」 「あの手のアングラーが多いから腹立つんや」友人はまだ怒っとる。見回すといつの間にかロッドを磯竿に変えとる奴がいる。ルアーの着水する音がせえへん。 「へへ、ミミズにしてん」 「なんや、もう諦めたんか」 「一匹釣らなアホらしいよって・・あいつはぶっ込みに変えとるで」 なんちゅう奴っちゃ、せっかくバスフィッシングやろう言うて来たのにこれやったらいつもと同じやないですか。 「バスプロになるんとちゃうの、根性出さんかい」 「あほらしなってん、ガキにやられるようじゃやる気なくすわ」ごもってもなご意見。「おっさんは鯉か鮒でも追っ掛けてんのが似合うてるが」 「アホ、わしゃ草魚狙うとんじゃ」好きにしなはれ・・・ 「冬の釣りは熱燗やな」 「冷えたビールもいけるで」 「ウイスキイが安なって良かったのう」 「飲めればボウズでもええの、酒あればすべて良しや」 「おまえまだワームでやっとんか、アホは懲りんからのう」 おっさん達は551のぶたまんがある日、てな笑い声たてよる。 わし切れたで、怒鳴ったってん。 「こらあ、俺にも飲まして」 |