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すれバスとすれない面々/98/2月号
琵琶湖のバスは賢いわ。特に琵琶湖バスマップが出てからちゅうもんは、どこで聞いてんやろかペケ印のポイントに居ると危ないで、と一斉に撤退しゃあはりましての、たまに居るのは親の言うこと聞かんガキンチョばかしという現象が起ってまんね、ほんまに。ランカーバスにはとんとご縁のなかったおいやん二人、年中ボウズやのにやたら張り切っとって、腕は自信過剰やから釣れない理由をいつも他のせいにしておりまんねやが、通い慣れた西岸のポイントにペケ印ぎょうさんつけられてしもて、釣り人が最近目茶増えてもうあきまへん。 しぁあない、西ばっかし行ってんと東岸に新規開拓や、と昼から彦根まで足を伸ばしましてん。 彦根港の駐車場で驚いた。ナンバーが滋賀、京都は当然としても福井や一宮、岐阜名古屋がようけおるがな、ここも同じかぁ、ほかに行くとこないんかいな、と大ぼやき。 ママチャリで来た地元の青年が、ここで昨日四十センチ、防波堤に出ても小型しかおらん、このへんがよろしいで、ツネキチでやりはったら。なんて親切に教えてくれたんやが、そこはほれバス釣りはど素人のおいやんでっしゃろ、ツリキチならわいのこっちゃけどツネキチが何の意味なんか知りまへんね、釣友は知っとるのか余裕の表情こいてフムフム言うて相槌打っとるので安心してん。 後で教えてくれ言うたら、お前知っとると思て聞かなんだ、なんて言いよんね。なんじゃ、お互い分かった振りしとっただけやんか情けな……。 気をとり直してまず銭湯行きましてな、ここがちょっと人と違うとこでんね、地元のおっちゃん達と裸のコミニュケーションやって体あっためてから始めましてん。 寒冷前線が通過中で天気は下り坂や、午前0時まで粘ってみてんけどさっぱりあきまへんね。 こんな筈やなかったのにいと、翌朝を期して車内で仮眠したんやが港の駐車場は若者の夜の社交場とは知りまへんでした。 来るわ来るわ、マフラー外した改造車やらロックを音量いっぱい上げたあほ車なんぞが、寒いからエンジンかけっぱなしで酒の回し飲みなんぞやっとる。 そこに親の寝込みを抜け出した娘達もやって来てキァアキァア喜んでお祭りさわぎじゃ、彦根の親、子女管理がちいと甘いで。 午前5時やっと辺りが静まったと思ったらもう釣道具抱えた人が寒風に飛びそうになりながらも、出勤して来よるが。熱き血騒ぐのう。場所取られたら徹夜した意味ないやん、わてら慌てて眼え腫らしたまんまで支度して飛び出してんけど、外は冷蔵庫でその上北風ビュウビュウ、東の空が白んで来ても風は収まらへん。 この天気じゃあバスが食うわけないがな、朝まずめ狙って来た人も今日はあかんわ、言うて帰りよんね。わしらなんのため夜明かししたんか分からんやないか・・ 風のこない所にしょうと南下しましてな、能登川の伊庭内湖まで来ると風は弱うなったんやがここもあんさん駐車場が満車やないけ、でかい水車が回っとる下でボート屋のおやじが「あと三隻しかないで乗るんか乗らんのか」なんてせかしよる。こんな寒い日にボートなんか乗るかい、と啖呵切って、オカッパリで昼頃までやったのに当たりもかすりもなし。 よし、ならもっと南へ行くか、と今度は長命寺の港内まで移動すると、この天気やろ、あちこちの釣場をさすらい歩いた釣人がたむろして情報交換真っ最中や。 この季節にゃあバスは動かんと人が回遊しまんねんな……。 朝から何処も全然あかんと言うとんね、バスは渡り魚になって南の国へ行ってしもたんかのう。 で更に南下、とうとう中主町の吉川港まで行ってもうた。 天気も回復して風もやんだせいか、ここは釣人が多くて活気が溢れとる。川原では小学生達が大勢集まって釣大会の開会式や、なんとも賑やかすぎて魚が逃げるで。 そのうちガキ共がウワッとばかりに場所取りを始めよった。わてらまるで小学校の運動会で借り物競争に引きずり出されたPTAの会長さんみたいに囲まれてもうた。「おっちゃん釣れとるか」 「今来たとこや」「頑張りや」なんてマセた口ききよる。しぁあけ彼らの手口参考になるで、まず一人一人釣果聞き回って、一番釣れた人の横で竿出しよんね。 参ったのう、大人が遊ばれとうが。 大勢おった釣り人もこれではたまらん、車の大移動が始まって岸辺にはガキの列ばかり、こっちもほかへ行くかと相棒捜すが何処に行ってしもたんかおらんやん。 捜しに行ったらなんや橋の下で竿かき回しとるやないか。 「なんばしょっとね」 「ルアー取られた」 根がかりして糸切られたんやて、諦めの悪い奴やのう。 「見えとんね、底に沈んだ木の枝にかかっとる、あそこや」 水面を覗くと確かに引っ掛かったルアーが見える。 「木を引っ張り上げるしかないな」と鯉釣り用の三本イカリを道糸につけて引っかけたんやがの、沈んだ木は腐っとって簡単には上がらん、何度やっても同じや、ええ加減でやんなってしもて「もう諦めえ」言いましてん。 「あかん、あのルアーがよう釣れんねん」とか申して、またポチャンと糸放り込みよる。その執念をもちっと釣りに使うたらええのに付き合いきれんで。三本イカリも釣りの時はめためた根掛りし易い鈎やのにこんな場合はすり抜けよって役に立たんが。 かれこれ二時間はあほみたいに大の男が沈木釣り上げ作業に係りきり、周りでは子供達の歓声があがっとる中で、黙々と単調な作業を繰り返しとりましてん。 「おっちゃん何しとるん」 「見て分からんか、ルアー引っ掛かかってん」子供はすぐに何人もたかって来よんね。「あれか、取ったるわ」なんて簡単に抜かしゃがって四、五人が網やら棒など持ち出して「せぇのう!」なんて掛け声掛けてあっさり引き上げよった。 「ルアーは高ぇからのう」なんて相棒は子供達に言い訳言うとる。確かに二千円も三千円もするのがあるけどよ、ちいと時間かかり過ぎちゃうか。 しかし琵琶湖まで来てのう、バスも釣らんと何時間もルアー釣っとってええんかいな。 「ええルアーなんやろ、なんぼしたん」「これかぁ、四八○円や」 しらっと抜かしゃがった、わてほんまによいわんわ、ってこのこっちゃで。 ええおやじがルアー釣っとる間に小学生はじゃんじゃん釣ってまんが、多い子供でもう五匹上げた言うとる。こっちゃこれからやんか。 「おっちゃん釣れてへんな 場所代わったるわ」やて、なんかわてら同情されとうが。 その甲斐あって、相棒に当たりがおましてな、四八○円のルアーも助けてもろてよう働いてまんが。「暴れたわりには小型サイズや、ナイスファイト!」なんちゅうて、惜しそうな面してリリースこいた。 どうも釣った魚は食わんと悪いというハングリーの年代やろ、どうもこのリリースって奴に慣れまへんね。 「バスは食えんのか」 「一円出せば十円やな」 「なんやそれ」 「くえん」 |