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春のあらしじゃ音海湾 99/6月号


                           ●絵と文 天野史彦

つりともの取材やなんて言うから、悪い予感しててん。
 こんな釣りべたの、こぎたねえおっさんつかまえて、何の記事にすんねん。
 とても絵になりまへんで、と編集長に一応忠告してんけどなあ。
 釣友の「うえちゃん」に相談したら、行こう行こう、と、わてより乗り気で、前日から行って様子見ようなんてことになってしもたんや。

 天気がおかしいので、午前中は様子見ててんけど、なんや雲が切れて大丈夫そうなんで、昼から出かけてみたんや。
 それが進むほどに悪くなるし、みぞれ混じりの雨降るわ、雷鳴るわ、強風は収まらへんとくれば、誰かてこんな天気に釣りに行くなんて思うとりゃせんわなぁ。

「うえちゃん」はなんや見たことない一張羅のジャンパーと帽子でバリッときめとるやんけ、わしゃいつものホームレスのおじさんスタイルのまんまや、こりゃあんたが主役やねぇ。

 悪い予感は的中や、舞鶴道を出たとたんにネズミ取りに引っかかってしもた。
 20キロオーバーときたもんだ、高速道路は80キロでちんたら走ってたっつうのに、ついてない時はこんなもんじゃよ。
 警察も商売でんな「まいど!」なんちゅうてえらい繁盛してまんが、真面目でドジなおっさん捕まえて何の効果があるんや、ええかげんにさらせ。

 高浜に向かう27号線、日置交差点に近い、餌屋に立ち寄ってみたら、おっさんわしらの足もとを一瞥してから、
「まさかサヨリ釣るつもりやないやろな」
と鼻先を一発かましゃがんね。
「サヨリが来てるちゅう電話やってんけど、あかんの」
「昨日網入ってもうたがな、何もいてへんで」
 予感はますます的中やないか、おまけに雨までひどなる。
「残念やったな、大阪から来たんか、ガシラぐらいしかおらんで」
「チヌはどないでっか」
「おるかいや、磯出ても無駄やで」
「しゃあけ帰るわけにもゆかんしな、もう何でもええわ」
なんでこうなんねん、日本海まで出て来たっちゅうに…

「音海」は湾内まで大波が来て船が揺れとる、もちろん渡船など出る訳がおまへん。
 救いは雲の切れ間から覗く山腹に、満開のかくれ桜がちらりほらりと漁港を見下ろしてる春の風景ぐらい…
 ここの漁港の波止ならまだ波風が弱いので、竿を出してみた。
 木っ葉グレがしきりとあたる、サヨリがちょっと姿を見せたが餌取りに出しゃばられて、たちまち見えなくなってしもた。
 雨がひどくなって釣りも中断、こうなりゃ「やけ」じゃ。と、ワインと日本酒を空き腹にガンガン飲んだもんやから、いっぺんに悪酔いしてもうて、なんと波止でこけて頭から着地。雨と血でえらい騒ぎじゃ。年甲斐もなくアホなこと。

 そんな騒ぎやっとる時に、つりともの永田さんから電話が入った。「えー、もう行ってまんの、天気悪いから相談しょ思ってましたのに…」
 申し訳ないよな、えろう気張って前日から来てしもて…
 頭にたんこぶこしらえて、その上この悪天候、悪い条件勢揃いやがな。
 翌朝、寝ずに自慢の「Z」飛ばして来てくれはった永田はん、ほんまにお疲れさんでした。
 空仰いでがっくり、海見て更にがっくり、仕上げにわしらをじっくり見て、こらあかん、写真は使えんわ…と思うたやろが。
 な、言うたやろ、このおっさんは絵にならんて。
 よう編集長に言うといてよ。
(茨木市在住)