| 新・釣具の知識 10 |
| 夢広がるPEライン |
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協 力/(株)ゴーセン 岸本仁志 菅野勝男 聞き手/編集部 永田 淳 |
| 船釣りを始め、投釣り、沖のディープジギング、大物釣りなどに近頃、新素材系の PEラインが猛威を奮っています。「PEラインとは如何なるものか?」と疑問をお持ちの方も多いと思います。そこで 今回はこのPEラインに焦点を当てて、PEラインを先駆けて作った「技術のゴーセン」と呼ばれる(株)ゴーセンの「研究開発センター」を訪ねてみました。今回のインタビューに応じて下さったのは、兵庫県東条町の研究開発センターの菅野勝男所長と岸本仁志研究開発課係長。 |
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どんな釣りに? 本誌 今日はPEラインのことについてお話を聞こうと思うのですが、PEライン が最初に日本に出だしたのはいつ頃からですか? 岸本 昭和62〜63年頃からです。 本誌初めはどんな釣法のために作り出されたのでしょう。 岸本 船からの胴突仕掛用のために作っていました。当時はデジタルカウンターが世 に出た頃で、まだタナが正確に測れなかったのです。 本誌 まあ、最初は何でもそんなものでしょうね。 岸本 ですからタナをとるために伸びない糸で、1mごとに色が付いている糸が求め られたのです。伸びがないと言うことで、テトロンラインが当時は隆盛を誇っていたのですが、更 に伸びないと言うことでPEラインがその座を奪った形になりました。 本誌 それが今では色々な釣りに使われるようになりましたね。 岸本 そうです。今では船の他に投釣り、落し込み、磯釣り、友釣り、ルアーなど多 彩な釣りに使われるようになりました。 本誌 それだけ多くの釣りに使われるようになると、号数のラインアップも多くなると思いますが、何号から何号まであるのですか? 菅野 004〜30号まであります。PEラインはナイロン糸の3〜4倍の強度がありますので、これだけの号数でほぼすべての釣りがカバーできるのです。 PEラインの特徴 本誌 それではPEラインの特徴について聞いていきたいと思いますが、材質は何なんでしょう? 菅野 超高分子ポリエチレンです。 本誌 超高分子といいますと? 菅野 これは糸を形作っているポリエチレンの分子が長いことを示しています。 本誌 長いとどうなるのでしょう? 菅野 何でも物質というものは分子の結合によってできています。この分子が長いということはそれだけ結合面積が広がるということで、結 果的に切れにくくなるのです。 本誌 構造は? 岸本 PEラインは細糸の集合体です。糸はデニール(d)という単位で計ります。1gで9000mの長さを1dというように定義しています。ゴーセンの場合はこの1dを1本の糸の単位としています。他メーカーさんによっ ては3dとか4dとかあります。 本誌 それではゴーセンさんの場合はこの1dの糸でPEラインを編んでられるのですね。 岸本 そうです。編み方は、髪の毛を編む三編みと同じ要領です。これを編組(へんそ)ブレイドと言います。 メリットは 本誌 PEラインの概要と構造が分かったところで、メリットを聞かせてもらえ ますか。 岸本 やはりナイロンより強いことでしょう。3〜4倍は強いですよ。 本誌 そこのところを詳しくお聞かせください。 岸本 超高分子ポリエチレンが切れにくいのは先ほどお話した通りです。それが最大のメリットです。 本誌 もう少し突っ込んでみますと… 岸本 ナイロンと比較しますと、PEラインは太くなればなるほど強度も比例して強くなります。しかし、ナイロンは比例しないのです。PEラインは糸の集合体ですので、10本よれば10倍の強さ、100本よれば100 倍の強さになるのです。 本誌 ナイロンの場合は? 岸本 ナイロン糸はモノフィラメントと言いまして単一の物質ですので、強度は比例しないのです。ちなみにPEラインみたいな繊維の集合体はマルチフィラメントと言います。 本誌 なるほど、一本なのでいくら太くしても強さに限界があると言うことですね。 菅野 さらに超高分子と言うのは分子をもう伸びないところまで伸ばしていますので4%しか伸びません。しかもこれは切れる直前に4%伸びるので、切れるか、伸びないかのどちらかとなります。 岸本 伸びないので、当然微妙なアタリもダイレクトに取れます。 本誌 従来のナイロン糸はどれくらい伸びるものですか? 岸本 30〜40%伸びます。だから100m糸が出れば30〜40mは伸びることになります。 菅野 ほかに比重が0・97と水よりも軽いことがあります。(編集部注:水は比重1.0、ナイロン1.14)落し込みに使った場合など、糸が浮きますので、エサをもっとゆっくりと落とすことが出来ます。 岸本 糸自体が浮くので、ウキ立ちが良くなると言うことも考えられます。 菅野 強度があるので、細い仕掛が使えるという利点もあります。 本誌 釣人はみんな細い仕掛を使いたがるものですからね。 岸本 細い糸だと、空気の抵抗を受けにくいので当然飛距離も出ますし、仕掛の馴染みも早くなりますね。 菅野 あと、ポリエチレンという材質自体が滑りやすい性質を持っているので、スプールからの糸の出方、ガイドの滑りの良さも加わり、飛距離は格段に違ってきます。 デメリットは…!? 本誌 ここまで聞いてくるといいことばかりですが、デメリットもあるのでは? 岸本 結節強度が一番の弱点です。何度も言っていますが、PEラインは分子を伸ばしていますので、分子が一定方向に並んでいるのです 。これは並んでいる方向に力が伝わると抜群の強度を誇るのですが、違う力が加わると脆いのです。 本誌 と、言いますと? 岸本 結び目では糸は色々な方向に力が加わることになりますよね。糸の水平方向の力には強いPEラインも垂直方向の力には弱いのです。鉄板などが許容範囲以上の力が加わると「ポキッ」と折れてしまう、こんなイメージです。 本誌 具体的にはどれくらい弱いのでしょう? 岸本 ナイロンの結節強度は通常状態の9割の強度となりますが、PEラインですと3〜4割の強度にまでなってしまいます。しかし、ナイロンの3倍の強度を誇るPEラインですから、それでも十分と言うわけです。 本誌 どうしても強度を弱くしたくない場合はどうしたらよいのでしょう。 岸本よく使われるのが編み込みです。これは直接結んでいるわけではないので、弱くなりません。ほかに直結する場合は間にフィルターなどを挟むのも有効な手です。 菅野 先ほども言いましたが、滑りがよいので、結び目が滑って解けることもあります。 岸本 糸を編んで作ってあるので、どうしても透明になりません。しかしナイロン糸 でPEラインと同じ強度にしようとしたら、3〜4倍太い糸を使わなければなりません。この辺のバランスの問題で、どちらがどっちとも言えないのが実情です。 本誌 コシがないと言うのをよく耳にするのですが… 菅野 それについては加工する以前に樹脂を混ぜ込んだりしていますが、ナイロンよりコシがないのは確かです。これはナイロンとは別の物と考えてもらわないとどうしようもないですね。絡まったときに解くのが大変なのは事実です。 本誌 切ってしまうには値が張りすぎますからね(笑)。バックラッシュと言う点についてはどうでしょう? 岸本 スピニングの場合は糸が束になって出るというトラブルが生じます。 ナイロンですと、糸がある程度伸びた状態でスプールに巻かれていますので安定し ますが、伸びのないPEラインですと「ユルユル」の状態で巻かれることになります。こうなると「ドバッ」と束になって糸が飛び出してしまいます。 本誌 両軸リールの場合はどうでしょう? 岸本 こちらはコシのなさが起因して、糸が食い込んでしまうことにより起こります。それで糸が引っかかってバックラッシュを起こします。 本誌 高い糸をバックラッシュで切ることにならないようにするには? 岸本 レベルワインダーのしっかりしたリールで、糸をクロスさせるようにするとよいでしょう。 本誌 ガイドを傷つけるということを聞いたのですが。 岸本 糸自体が傷つけるということはありません。ただ、編んである糸なのでその隙間に小石が入ったり、塩の結晶が出来たりすることにより傷つけることはあります。 菅野 伸ばしきっているので、衝撃的に過度の力を加えると「プツッ」と切れてしまう脆さもあります。 一生ものの糸 本誌 何かPEラインを作る上で苦労もあったのでは? 菅野 ポリエチレンは熱に非常に弱いという性質を持っています。80〜90度くらいで溶けてきます。これだけ弱いので、加工するにも大変苦労しました。 本誌 熱に弱いというのは加工しにくいでしょうね。ガイドの摩擦熱で切れたということはないのですか? 岸本 1件だけクレームがありましたが、滑りがよいのでまず大丈夫です。 本誌 他に何か? 岸本 ポリエチレンは待ったく何の薬品にも反応しないのです。言い替えれば化学的に不活性な物質なのです。 本誌 と言うことは、塩酸をかけても、硫酸をかけても溶けないのですか? 岸本 そうです。ですから染色にも大変苦労しました。 本誌 ではこのPEラインは何で色付けされているのですか? 岸本 染料を乗せて上から接着剤でコーティングしているのです。 本誌 でも、接着剤も付かないのでしょう?なぜ色が乗っているのですか? 岸本 なんででしょうね、不思議ですね(笑) 本誌 企業秘密、と言うことですか? 岸本 そういうことにしておきましょう。 本誌 なぜそこまで苦労して色を付けないといけないのでしょう。 菅野 やはり付加価値です。色が付いていないと売れないのです。 本誌 まあ、釣りは遊びですから、カラフルにしたいのも分かりますね。 岸本 でも最終的には色ははげ落ちてしまいます。これはどうしようもないですね。 菅野 当社では中通し竿用のPEライン、「テクミー中通しライン」の染色方法で特許を取りました。これはポリエチレンを加工する段階で色を付けた商品です。こうすることによって竿の中に染料がはげ落ちて竿の中を汚すのを防げます。 本誌 化学反応を起こさないと言うことは、切れない限り一生物の糸ということですか? 岸本 そうです。ナイロン糸の場合は買ってそのまま使わずに置いておいても、月日が経つと劣化します。これは紫外線や空気中のホコリ、湿気などによってです。しかし全く伸びず、化学反応も起こさないPEラインですと一生もちます。これは 企業としては余り大声では言いたくないことですけれども。 本誌 売れなくなりますからね(笑)。量産できれば安くなる 本誌 値段の話になりますが、なぜこんなにもPEラインは高いのでしょう? 強度がナイロンの3倍なら価格も3倍ぐらいするのですが… 菅野 売上が延びていると言っても、やはりまだまだ釣糸としてのシェアが低いのが実情です。ゴーセンはテニスなどのラケットのガット、衣類の繊維なども作っています。従来のナイロンはこれらの商品と共用できるので安価で作れるのです。その点、PEラインは先ほどもお話した通り、熱に弱いのでガットや繊維に加工す るのが難しいのです。 本誌 確かに熱に弱い服はあまりいいものではありませんね。 岸本 それからやはり構造が複雑なので、作るのに手間がかかります。それも原因ですね。もっと売れれば製造ラインも充実して、安価で出来るようになります。ですからもっと買ってください。 研究開発の四方山話 本誌 なにか「これだけは言っておきたい」とか自慢などがありましたらご自由にお願いします。 岸本 沖での胴突用のPEラインが世に出て、ある釣具屋の店主が一本一本解いて、アユ用に使ったということがあります。それでPEラインのアユ糸を出せといわれました。この他、投げ用、ルアー用などはどれもうちが最初に世に送り出したものです。その当時はPEライン=沖釣りと決まっていましたから、結構画期的でした。また、このラインの研究に日夜明け暮れていたのですが、ちょうどその頃子供が出来まして、「女の子が生まれたらテクミちゃんにせえ」(編集部注:テクミーとは ゴーセンのPEラインの商標)と言われたほどでした。(笑) 菅野 投げ用のテーパーラインも今年のゴーセンの新製品です。これは徐々に先細りさせるのに大変苦労しました。 本誌 編んである糸を細くするのはどうするのですか? 岸本 それも秘密です(笑)。 岸本 投げ用に作った時は、「小石の一つ一つまで分かるほど感度が良すぎて、アタリと紛らわしくて困る」というクレームもありました。 菅野 フィッシングショウの時には必ず1個や2個は盗まれる。まあ、それだけ値打ちがあると言うことだと思っています。 本誌 本日はお忙しい中、有り難うございました。 |
| PEラインについてお分かりになりましたか? PEラインは結節が弱い、コシがない、透明度がないなどの弱点はあるものの、それらすべてを補っても余りある性能を秘めた、次世代の夢のラインだと言うことです。さらに強く、さらに深く、さらに細く、さらに大物を、さらに遠くへと釣人の夢を 限りなく膨らませてくれること請け合いです。 |
