新・釣具の知識 13
深場のフロンティア 電動リール

協 力/リョービ(株)
聞き手 編集部/永田 淳


 まず、リョービさんの電動リール開発についてお聞きします。
山下 85年頃から研究開発を始めて、40〜50mの浅場から200〜300mの中場で使える電動リールを、まず始めに開発しました。
 それ以上の深場は他社から大型電動リールが発売されていましたが、これにはハンドルがついていませんでした。
 初期の電動リールにはハンドルがなかったんですか?
山下 初期の電動リールはスイッチを押すだけ。まるでウインチでした。深海のキンメやメヌケ、アコウ用でそれより「浅場を電動リールで楽しもう」これが開発の原点で、たとえば、マダイ釣りなんかでよい電動リールができないかと考えました。
 当社では、それまでに手巻きで丈夫なアドベンチャーというリールがあり、お客様から、このリールの電動を出してくれという要望があったんです。それが電動リール第一号の『アドベンチャー電動101』で87年に完成しました。
 開発に2年弱ですね。
山下 もともと使えるリールがありましたから開発は早かったですね。手巻き両軸リールにモーターを付けて楽に巻きたい、タナや水深が分かればということでアドベンチャー電動101が完成したんです。これはパワーがあって好評でした。 釣力が20kgで、故障が少なくファンの信頼を獲得して一気に普及しました。これは現在でも定評となっているリョービの電動リールの基礎を作ったリールといえます。
 アドベンチャー電動101の糸巻量は?
山下 テトロン10号で400m、新素材ラインでいうと8号で700m。そして次に浅場用として『アドベンチャー80プロターゲット』を開発し、小型化への道が始まりました。

小型軽量&ハイパワー化

 小型化と大型化へ分かれましたが、現在の沖釣りの主流は?
山下 販売数では使用範囲が広い80番クラスで新素材6号糸が300m巻けるタイプです。80番以上の大型は深場釣りや青物狙いに人気がでました。これが88年頃です。
 89年には小型化した60番とハイパワーの100番が登場します。100番は糸巻量が8号で800mに増え、中深場までカバーできるようになりました。
 60番のターゲットは…?
山下 マダイ、アジ、イサギなどで、6号糸が220m巻け、かなり小型化されて手巻きリールに近づきました。
 話が戻りますが第一号『アドベンチャー101』は何釣り用に開発されたのですか?
山下 101シリーズは700〜800mまで使えるので、アコウダイまで含めた広範囲な中深場釣り用でした。当時は、リールが大きくても「たくさん糸が巻けるからいいや」という声が多くこのリールをマダイ、アジ、イサギに使った人も多かったようです。
 そのうち小型軽量の要望も増え、小型サイズはより「小型軽量化」を、大型はより「ハイパワー化」路線に二極分化しました。94年までアドベンチャーシリーズで展開してきました。
 次の展開は?
山下 95年に『70剛技』を発表して、軽量ハイパワー路線となりデザインが変わりました。80番で6号300mのキャパシティでしたが、小型化のニーズが多く、糸巻量を少し減らし、ハイパワー化にして70剛技として発表したので。ここまでは基本デザインを踏襲し、モーターの改良やハイパワー化などで進化してきました。

 在の沖釣りは電動リールなしでは考えられませんが、このあたりの状況はどうでしょうか?
山下 水深50mほどのマダイ、アジ、イサギ、ワラサ(メジロ)は小型電動リールから始まり、ちょっと深場のムツ、メダイ、青物などの高級魚で釣りにくいものは中型電動リールで80番台。その上の100番は300mまでいけますのでキンメやアコウです。

最新機『アドベンチャー』

 アドベンチャーの最新機について教えてください。
山下 96年型『アドベンチャー電動VSシリーズ』以前は、基本構造はどれも同じで、ユーザーの選択肢は糸巻量とパワーの二つに絞られるのです。ところが、アドベンチャー電動VSシリーズは『レバードラグ(Lドラグ)』が搭載されているんです。
 このLドラグはスタードラグとどこが違うのでしょう?
山下 このLドラグがVSシリーズの特徴です。Lドラグは、微調整が必要なトローリングリールなどに搭載されるレバードラグと同じような機能をもってるんです。最新型にはスタードラグの役割をするドラグとLドラグ(レバードラグ)が二つ備わっています。
 レバードラグ外側のプリセットノブでスタードラグと同じ調整を始めにして、やりとり中にはレバードラグを手前に倒すとドラグのテンションが弱まり、向こうに倒すと強くなり、引きに応じたドラグ調整が瞬時に可能なわけです。
 大物にラインを切られたというのはドラグ調整が問題ですね。
山下 魚の引きに対してリールがついていけないんです。でも、このLドラグは即座に魚の引きに対応ができます。
 トローリングリールのレバードラグとの違いは?
山下 トローリングリールは糸をフリーにするクラッチがなく、レバーを倒すことで糸がフリーの状態になり、そして戻すとロックされます。
 電動リールにはクラッチがあり、仕掛の上下はクラッチ、ドラグ調整はレバーで行います。ここがトローリングリールと違うところです。

やりとりを楽しむために

 話は前後しますが、87年に第一号電動リールを発売されたときのユーザーの反応はどうでしたか?
山下 当時としては小型電動リールということで大反響でした。
 ぼく自身、電動リールを使ったことがないのでなんともいえないのですが「釣りの醍醐味が減る」という反応はなかったのでしょうか?
山下 釣り味ということですね。リョービのリールはウインチではありませんからそんなことはないですよ(笑)
 竿とLドラグで、魚との戦いを充分楽しんでください。リールを巻くということがなくなると、よりやりとりに神経がいきとどいて楽しめますし、大型のバラシも少なくなります。手返しも早くなりより釣りに集中でき貴重な時間を有効につかえますね。  それに、ハンドルもついていますから魚が掛かった一番危うい瞬間は、手動で対応することもできます。
 手巻きと電動巻きの併用はできますか?
山下 最新のアドベンチャー電動VS700L/900Lでは「手巻き」「電動」「手巻き+電動」が選択でき、追い巻きも可能です。ドラグを緩く設定しておくと魚の引きが強いとドラグが滑り糸が出ますが、ここで少し手で巻くと微調整ができます。竿を手持ちにしてマダイ釣りをやるときなどはこれで、釣り味が倍加します。以前の電動リールは手持ちでは重たく疲れましたが、アドベンチャー電動VS700Lで1・12kgですから手巻きリールとくらべても遜色がありません。
 このほか電源の問題があると思いますが…。
山下 船の電源では船のエンジンの回転で電圧が変わりパワーの変化が起こり巻き上げにムラが起こるのです。
 電動リールの性能をフルに発揮させるのなら専用バッテリーのほうが電圧が一定しますから電源は重たいですが、バッテリーがよいと思います。
 アドベンチャー電動VS700L/900Lの巻き上げは何ボルトのモーターですか?
山下 12ボルト直流モーターがスプール内部にあって、「スプールインモーター」タイプといい、スプール外にモーターがあるタイプもあります。
 なぜスプールインタイプかというと、コンパクトに設計できるからです。ここで一番苦心するのが防水対策です。モーターの軸を伝い水が入るとモーターが壊れますから、これを防ぐためにモーターをシールドしています。これがなかなか難しいところです。
 たとえばラインの塩抜きをするためにスプールにホースで強く水をかけて水が入り壊れてしまったという苦情が初期のリールにはありましたが、現在では防水性能も向上し耐久性能も格段にアップしています。

ライン量の読取りは…?

 デジタルカウンターに表示されるライン量の読取りは?
山下 初期の頃はローラーが巻いてあるラインの上を回転してカウントしていたんです。現在はリールに糸を巻くときに設定機というものを取り付けてリール本体に記憶させます。
 糸を巻くとスプール径が大きくなり、それを読みとって設定機が何cm上がれば何m糸を巻いたかというのがリールのマイコンにインプットされます。これをリールのセンサーが計った数値と合わせて何m糸が出たかを計るのです。従来と決定的に違うのは「設定機が読んだライン量(数値)をリールが記憶する」ということなんです。記憶させたら設定機を外しても、最初に覚えた数値がありますから後は狂いません。
 たとえば糸が切れたら?
山下 大丈夫です。糸が切れたらゼロ設定をすると、もう一度読み直しができます。
 実際に出ているライン量とカウンター数値との誤差はどれほどなんでしょうか?
山下 誤差は2〜3%で、ラインの伸びも関係しています。しかし、このへんのことはユーザーも分かっておられますので自分で調整して使っておられると思います。
 完全に誤差無しということは可能なんでしょうか?
山下 これはラインの巻き方一つでも相当変わります。我々が2〜3%の誤差というのは一定のテンションをかけて、ラインを巻いたときの話ですから、いくらパーフェクトだといってもどうしても誤差は出るのです。特に新しいラインを巻く場合は使っているうちにラインが伸びて誤差が発生します。
 船べり停止機能は?
山下 初期ライン巻き上げ状態のところでゼロ設定にして記憶させると自動的に船べり停止になります。
 同じ速さで巻き続けて急に止まると危ないですから、船べりが近付くと巻き上げが遅くなるようにしてあります。
 タナ設定も同じですか?
山下 そうですね。釣りたいタナまで落としてクラッチを入れると、そこを記憶してそこで止まる仕組みです。
 糸の号数による糸巻量の設定はどうするのでしょうか?
山下 この最新機種になるまではローラーシステムでしたからどんな号数でも関係ありませんでしたが、最新のVSタイプでは記憶システムですので、この問題が出てきました。
 そこで、3タイプまでライン号数を覚える設定機能をつけました。この機種はスプールの取り外しができ、スプールを交換できるので、号数が記憶できるのがメリットですね。
 従来のリールはスプール交換ができませんから、糸の号数を覚えても糸を巻き替えねばならなかったのです。
 これはLドラグと共にアドベンチャー電動VS700L/900Lのセールスポイントです。

電動VSシリーズのドラグ

 ドラグは、普通の両軸受けリールのように板のようなものが重なっているのですか?
山下 ドラグワッシャーですね。VSシリーズは6枚で、一番滑らかでパワーもあり、均一に力がかかります。
 電動と普通のリールとでは、どこが違うのでしょうか。
山下 最近はドラグを滑らせて釣ることが多く、より摩擦に強い素材を使っています。
 ドラグが滑っている時でもモーターは回り続けているのですか?
山下 そこが大きな特徴です。このリールでは一定の力で巻き上げ、魚が引いた分だけドラグでラインをスルスルと出すのです。ここにもLドラグが活かされています。  これをモーターのパワーだけでやると魚の引きによって巻き上げのトルクが変化し、ガクガクという動きでトラブルの元になります。

スプール交換方式

 アドベンチャー電動VS700L/900Lリールの目玉、スプール交換方式のメリットは?
山下 二つありますね。一つは先ほどもお話した、異なった号数のラインが使えるということ。もう一つはメンテナンスです。スプールとモーターを取り外して簡単に水洗いできるようになったということです。
 錆対策は?
山下 モーターにもう一つ防水カバーをかけて、完全シールドとしました。その分重量は増しますが、防水性能を考えるとこれがよいと思います。
 モーターが大きいほど、ハイパワーでしょうか。
山下 大きなモーターほどパワーは上がりますが、今のところはVS700L/900Lのモーターが限界です。
 モーターのトルクと巻き上げスピードの相関関係というのはあるんでしょうか。
山下 リョービの電動リールはスピードを上げれば上げるほどモーター本来の力が発揮できます。
 スピードを上げるほど釣力も強くなるということですか?
山下 モーターが正常な回転をする状態が一番パワーが出るのです。
 スピードが落ちてしまうとモーター自体のパワーも落ちますから、スピードを極端に落とさないため、電圧をコントロールする装置が組み込まれています。例えば大型魚が掛かり、ドラグを締めていると負荷がすべてモーターにかかります。そのときに巻き上げの力を落とさないために電圧が大きくなるように設計されています。

電動リールは両軸受け

 話が横道にそれますが、スピニングリールの電動化は可能ですか?
山下 スピニングリールのハンドルにモーターをつけたものがありましたが、スピニングリールにモーターがつくと、実際には非常に使いにくいもので現在では生産されていませんね。
 電動リールはやはり両軸受けがベストだということですか。
山下 電動リールは水深のある釣場で使用しますから大きな釣力がいります。両軸タイプの方が力が出ますので必然的に両軸リールになります。

巻き上げスピード…

 アドベンチャー電動VS700L/900Lのカタログを見ますと、『空巻きダッシュ』という項目がありますがこれは…
山下 仕掛の手返しを早くするときに使います。通常巻き上げは無段階変速で毎分45〜90mで巻き上げますが『空巻きダッシュ』では毎分140mと180mの2段階の速さで巻けます。
 魚が掛かったときには使えないんですか。
山下 魚が掛かったときに、このスピードにすると、口切れをおこしたりバレたりしますので、魚とのやり取りには使えません。スピードを2段階にしたのは、仕掛の重さによって、速く巻きすぎると糸ヨレが起こる場合があるのでスピードを2段にしたのです。
 アドベンチャー電動VS900Lの場合、瞬間最大巻き上げ力が30kgとありますが、これは30kgのものを上げられるのですか?
山下 これは瞬間ですので、常時は20kg前後です。

これからの電動リール

 ルアーのジギングなんかは無理ですか?ジギングが流行っていますがジギング専用の電動リールを作られる予定はないのですか。
山下 バーチカルジギングは落とすだけなので可能ですが相当重たいメタルジグを使わないとむずかしいですね。
 ジギングの面白さというのはジグを操るところにあります。それを電動でやると面白くなくなります。ですからジギング用というのは考えていません。
 これからのリョービさんの電動リールの展開を教えてください。
山下 我々は最新の『アドベンチャー電動VS700L/900L』を開発しましたが、まだ満足していません。より軽量でハイパワーで使い勝手のよい丈夫な電動リールを追求します。またターゲットを絞った専用電動リールも開発したいと思います。

メンテナンスについて

 最後にメンテナンスについてお聞きしたいのですが、どういったことをすればよいのでしょうか。
山下 スプールを取り外してラインは塩抜きしてください。それとモーターシャフトのところにベアリングが入っていますので注油してください。大きなメンテナンスはこれぐらいで、あとは釣行後によく水分を拭くぐらいですね。それと、長持ちさせたい方はなるべく冷暗所で風当たりのよいところに保管してください。
 また、先ほども言いましたが、船の電源は電圧が不安定ですから専用のバッテリーを使ってください。
 今日はどうもありがとうございました。

という訳で、船釣りに関してまったくのど素人のぼくの「電動リールレポート」どうでしたか? まだまだ、これからが楽しみな電動リール、その門をちょっとだけ叩いたような気がしました。
 (文責在 編集部 永田 淳)