新・釣具の知識 4
中通しロッド

まとめ 編集部/武富純一

 前回「SiC」の項で、「道糸をドンドン繰り出すという作業が生まれた時、すでにガイドという概念はできていたに違いない」と述べた。
 さて、今回はそのガイド竿を使い出したとたんに発想されたに違いない「中通し竿」のハナシ。竿の外を通る糸を、いっそ竿の中に入れられないものだろうか、というアイデアは誰もが思い描いたことだろう。

その原型は戦前から
 さて、この中通し竿というスタイル、一体いつごろからあったのだろうか? 編集部内で聞いて回ったところ、なんと戦前からあったそうだ。当時すでに山形県庄内地方にチヌ竿の竹をくりぬいた中通しのチヌ竿があったという。
 さらにもう少し知りたいと書庫から引っぱり出してきたのは「釣百科」という古書。著者は松崎明治氏。昭和26年の再版とあるが、初版は昭和13年である。その中の「釣具の常識」の竿の項に「中通し竿」が説明されていた。
 −−中通し竿とは差し込み式竿の一種であるが、糸巻または車をつけて竿竹に数倍する糸を巻きつけ、その上方に小穴をあけて糸を中にもぐらせ、各々継竹の芯を貫いて竿先に引き通したもので、水の深さや魚の遊泳している水層に応じて道糸の長短を自由ならしむるためで、ハゼ竿やシロギス等比較的小物の海釣りには多くこの竿が選ばれる。しかし、釣っている最中に万一道糸が切れた場合、簡単に修復できない場合がないでもない−−と述べられてある。
 続いてガイド付きの竿を「外通し」として紹介し、−−この頃ではハゼ、キス等の中通し長竿の穂先だけを外通しにした特殊な長竿があるが、外通しは主に短い竿に限り、西洋風のリール竿も外通しの一種と見られる−−とあった。
 これにはちょっと驚いた。現在ある中通しロッドの基本要素がすべて揃っているではないか。

欠点は糸通りの悪さ
 では歴史あるこの中通し竿が、なぜ当時から主流にならなかったのか?
 まず誰もが想像できるのは糸通りの悪さだろう。構造上、中通しはどうしても糸全体で竿の中をゴシゴシと擦ることになる。魚が掛かろうものなら糸全体が竿内部にベッタリくっ付き、その糸通りの悪さはガイド竿と比べるとかなり分が悪かったのは、たやすく想像できる。思ったように糸は出てこないし、魚を掛けても糸が竿を擦る分、余計な力が要る。内部でのコスレによる糸切れ等のトラブルもかなり頻繁に起こったのではないだろうか。

高度な内面加工技術の進歩が…
 それが今、船竿として注目を浴びているのはつまり、竿の製造技術の格段の進歩によるもの。素材の革命は当然として、一番に言えるのは、中通し竿のネック、糸通りの悪さが見事に解消されたことだ。
 手元のダイワ精工のカタログでその特徴を見ると、「トップ・インナー・エントランスのすべてはSiC。さらにロッド内面はフッ素系ワックス処理」とあった。リョービも同じ箇所のSiCに加えて「ロッド内面シリコン加工」とある。竿の内面をこうした素材や技術で滑りやすく加工するなんて、ひと昔前なら、わかっていてもとても不可能な芸当である。
 さらに、松崎氏をして「万一道糸が切れた場合、簡単に修復できない場合がないでもない」と言わしめた、糸切れ時の解消策としてライン通し用のワイヤーが必ずついている。新素材の道糸の出現によって糸切れそのものがまず無くなった点も当時と比べて大きく違うところだろう。「ガイドが消えて理想の柔軟性を実現」「糸フケがない、糸がらみがない」「穂先の巻き込み折れを解消」「糸にやさしく、よく滑る」これが両社の中通し竿のキャッチフレーズだ。 かの松崎氏、もし現代の中通し竿を見たら、何とおっしゃることだろうか。
中通しロッドは、ダイワ精工では「インターライン」、リョービは「インターゲット」と呼称している。今では船釣り竿の主流になりつつある。