新・釣具の知識 7
光るウキ

まとめ 編集部/武富純一

 夏から秋にかけては絶好の夜釣りのシーズン。暗い波間に漂うウキの小さな光が不意にユラユラと沈み、明かりがボンヤリと海中にふくらむさまを見るのは、夜釣りファンにとって堪らない瞬間だ。今回は、夜釣りに必携の「光るウキ」について探ってみた。

魚と光の関わりは昔から
 魚と光の関わりの歴史は意外に古い。遠くは万葉集にも「漁火」という言葉が出てくるという。松明などの光で魚を集める漁法は鵜飼いや火振り漁として知られている。現代では強力な光源を用いたイカ漁やカーバイトランプでイカナゴを寄せ、それに集まったメバルを釣るランプ釣りなどが有名だ。また、深海釣りやタチウオ釣りにも光が有効なことはかなり以前から知られている。

光がウキに使われたのはいつ?
 さて、それでは光がウキに利用されたのはいつの頃からなのだろう?
 長い釣りの歴史の中で、ウキという新ツールが発明され広まっていった時、「これが夜でも見えて使えたら……」という思いをはせた釣人はきっといたに違いない。しかし、ウキが光るようになるまでは、その先まだかなりの年月が必要だった。ではウキが初めて光ったのはいつ頃のことだろう?
 その原型として「コレ、ひょっとして光るウキの元祖?」と言えそうな文献を見つけたので紹介しよう。

光るウキの起源は「線香ウキ」?
 火を付けた線香をウキに立て、静かに水面に浮かべ、じっとアタリを待つ……、その昔、こんな釣法が広島にあったという。
 時は昭和18年。戦時中で灯火管制の強化、防空訓練も実践的に入った頃のことだ。こんな中、一部の熱心な釣人たちは“非国民”との非難を恐れ、夜間にこっそり釣場へと向かった。目的地は太田川の上流、狙いはコイ。
 だが、誰でも想像がつく通り、小さな線香の火はアタリや水没のたびに簡単にジュッと消えてしまう。確かにコイは釣れたに違いないが、その度に線香を再セットして火を付けねばならない。これではとても不便だったに違いない。
 もっとも線香はこれより前の時代にすでにあったから、もっと前からやっていた釣人はいたのかもしれない。

これぞ正真正銘“ホタル”ウキ
 そこで次に考えたのが、闇夜を光りながら飛び交うホタルの利用だ。枯れて白くなったネギの葉の先端を3cmほどに切ってホタルを1〜2匹入れ、トップにかぶせて細糸で硬く結ぶ。これで水中に沈んでも光は消えず、アタリもよく分かったという。これぞ正真正銘のホタルウキ。それにしても身近にあるものをよくもここまでうまく利用したものだ。(参考資料/あき書房「釣りの資料室」勝部直達著)

電子ウキの登場
 その後、ずっと時が移って登場したのが電池を利用した電気ウキ。これはご存じのように電池と豆電球をウキ内部に仕込んだもので、初期の頃には海水で反応する電池で電気が付くしくみのものがあったという。
 今では電球が発光ダイオードに代わり、電池も専用のピン型リチウム電池が松下電池から発売され、デザインやバリエーションもたくさん揃っている。
 最近では同社から水に沈むと瞬時に変色する「プリズム変色ウキ」が発売され、アタリの瞬間が光の色の変化でわかると好評だ。

化学の光「ケミホタル」
 そして次に釣人の前に登場してきた新しい光が、化学エネルギー利用の発光。いわば前述のホタルの光を人工的につくりあげてしまったのが、化学発光体「ケミホタル」。ポキンと折り曲げるだけで二種の薬品が混じって光り出す不思議な光だ。
 これはもともとはアメリカのNASAの技術で60年代、アポロ計画が進む中、宇宙船内の照明に熱や電気スパークを伴わない光源が必要となって開発されたサイリュームという商品を小型化したものだそうだ。「味の素」や「セロテープ」のように、特定の商品名が通称のようになってしまうことがあるが、今や「ケミホタル」という名前もそのひとつと言えるだろう。

光るハリも新登場
 さらにこの春、同社から発売されたのが、光るハリ「ケミブライト・フック」だ。これは、ハリの軸部分に新素材の蛍光塗料を塗ったもので、従来の夜光や蓄光塗料ではできなかった長期の発光時間や耐久性を持たせたもの。
 電子ウキ、ケミホタル、そして光るハリ……今の釣人はこうした素敵な技術の光で夜釣りを快適に楽しむことができるようになった。波止などでこうしたウキが次々に投げ込まれ、点々とした淡い光が波間をユラユラと漂うさまは、釣人を一種幻想的な気分にさえさせてくれる。あわよくば漂うだけじゃなくてズボンと一気に沈んで欲しいのだけれども……。
(本記事を作成するにあたって日本化学発光(株)制作のPR誌「ケミホタルクラブ/第11号」を参考にさせていただきました)