つりぐのちしき 8
釣具とPL法

まとめ 編集部/武富純一

今年7月1日より、PL法(製造物責任法)という法律が施行された。詳しく知らない人はまだ多いとしても、このコトバぐらいは耳にしたことがあるだろう。今回はPL法とはそもそもどんな法律なのか、釣具への適応とメーカーの対応、ユーザーの心得等をいろいろ探ってみた。

PL法とは?
 PLとはProduct Liability(製造物責任)の略。欠陥商品による事故で身体、財産に被害を受けた場合、生産者が責任を負うという制度で、これまでは欠陥がメーカーの手違い(過失)によって発生したことを立証しなければいけなかったが、この法律では製品の欠陥と事故との因果関係を被害者が証明できれば良い。
 つまり“製品の明らかな欠陥”で被害を受けた時「お前んとこの製品つこてエラい目に会うたやんけ〜」というクレームをこれまでより簡単に訴えることができるようになったわけだ。もともと消費者保護の観点から制定されたものだから、企業としては損害賠償を迫られる可能性が従来より高くなるわけで、当然、安全対策への姿勢がより重要になってくる。

釣具メーカーの対応は
 PL法施行に伴い、各釣具メーカーもいろいろな対応を迫られているようだ。
 あるメーカーは商品の説明書きにこれまで「潰れやすい」と表記していたのを「潰れます」、「サビる恐れがあります」を「サビます」とはっきり明記するようにしたそうだ。当初はこうした表記により苦情が増えるのではと思ったのが、逆に製品の取り扱いが以前より丁寧になってきているのではということだ。製造段階での検査工程を従来より多くして欠陥や不備を未然に防ぐようにもしているという。
 企業によっては品質保証部という部署があり、PL委員会やテーマごとの分科会を設けて、製造から販売、使用まで細かく対応しようとしているところもある。また、あるハリメーカーは簡単に破れないパッケージに気を使い、コストが高くついてでも破れないような袋を工夫しているという。

誤使用は適応外
 ただし、使用者の“明らかな誤使用”によって事故が起きた場合には、当然ながらユーザーが悪いわけで製造物責任は何ら発生しない。PL法のポイントは、その誤使用が“通常予想される範囲内”のものであり、製品や取り扱い説明書に特段の警告表示をしていないような場合はメーカーに責任が生じる、という点にある。明らかな誤使用というのは感覚的に分かるような気がするのだが、実はこの“通常予想される範囲内”というのがクセモノだ。どこまでが通常予想される範囲内かというのは製品の種類や各人の感覚によってまちまちだからだ。
 勢い、メーカーとしてはとりあえず細かく表記しておこうということになる。最近、テレビCMでやたらとテロップが目についたり、釣具屋で買った商品の説明書きの内容がやけに詳しくなったているのに気づいている読者も多いはずだ。
 誤使用による事故が予想されるあらゆる事態を表記しておかないと、メーカーとしては単純に安心してはおられないということだろう。

中にはゴネまくりユーザーも
 こうしたメーカーの心配は一面やはり当たっている。数あるユーザーの中にはPL法にかこつけていろいろと難癖を付けてくる者が少なからずいるらしい。
 例えば「お宅製のヘラ竿で釣っていたら穂先が折れて2万円のウキを持っていかれた。高価なウキをどうしてくれるねん」「電動リールが故障して、その日一日釣りにならなかった。釣代弁償せんかい」とかいうケースだ。
 釣人にすれば、これが明確な製品の欠陥だったら怒るのはもっともだし、メーカー側も製造上の欠陥ならもう平謝りしかない。メーカーとしてはこうした場合、ケースバイケースで誠意ある対応努力をしているようだ。
 しかし、明らかに誤使用ではないかと判った場合でも、相手は大事なお客様というわけでそう簡単には断定もできず、一方的に言えない場合も多いというのが実状だ。中にはこうした点を逆用してやたら文句を並べる、いわゆるゴネ得狙いの輩も出てくる。あるメーカーの担当者は「実はこうした“ゴネまくりユーザー”は関西系に多いんですよね〜」と苦笑していた。思わず私も笑ってしまったが、後でとても情けない思いにとらわれてしまったゾ。こんなことで関西人のイメージが悪くなるのはゴメンこうむりたいものだ。しまいに「関西人対策マニュアル」なんて整備されたりして。

メーカー向けのガイドライン
 こうしたトラブルができるだけ発生しないようにと、(社)日本釣用品工業会ではメーカー向けに「釣用品の安全表示に関するガイドライン」と「製品事故、苦情処理に関する対応マニュアル」という小冊子を発行している。これは釣具工業界として、製品の安全表示にある程度の表記の基準を設けておこうという主旨のもので、各メーカーはこのガイドラインに沿って各製品に表示している。
 例えば竿に関しては図1のようなシールが貼られる。表記事項には「高圧線・架線・電線による感電に注意してください。素材特性上、電気をよく伝えます。したがって電線等に接触すると感電する恐れがあります。場合によっては死亡事故につながります。特に高圧線の下では絶対に使用しないでください。高圧線の場合、近寄っただけでも高圧線から放電し感電する場合があります」と感電や落雷への注意がかなり詳しく明示されている。こうしたシールは以前からあるが、各メーカーはPL法の登場で簡単には剥がれないよう、かなり強力に張り付けるようになっているという。
 また、スピニングリールには図2のような記号で、表記例のひとつには「糸が勢いよく出ている時は、糸をつかまないでください。糸で指を切ることがあります」とあった。その他の製品の表記事項にざっと目を通して見ると「回転している時、回転部分に触れないでください。けがをする恐れがあります」(電動リール)、「釣糸を切断する場合はハサミなどを使用してください。手や歯で切断するとけがをする恐れがあります」(釣糸)などがたくさん表記されている。
 全体に「○○すると、○○の恐れがありますから注意してください」という構文が多い。具体的でわかりやすいが「こんなことしたら、そりゃそうなるわな」と分かり切った事が多いのも事実だ。
 また「針先は危険です。取り扱いには注意してください」なんてのもあたりまえだし「釣り以外の目的に使用しないでください」などは、ここまで明記しておかないとダメなんだろかと思ってしまった。これも“通常予想される範囲内の誤使用”の範疇というわけだろうか。

信じたい双方の良識
 アメリカのどこかの洲の法律に「ロバの腹の下でたき火をするべからず」という、バカみたいな法律があるそうだ。その昔、実際にあったやってはいけない行為を次々に法に追加していったら、こんなのも混じってきたらしい。作った側には、実際あったのだから必要だという思いがあったのだろう。いかにも訴訟国家アメリカらしい話だ。でもここはニッポン、PL法に対する反応がこんなトンチンカンなことにならないよう、作る側も使う側も双方の常識やモラルの範囲内で考え、お互いの良識を信じたいものだ。