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パソコンで探る
垂水沖一文字、グレが必ず釣れる日!?」
武富純一


 神戸・垂水漁港の沖合にある垂水一文字。明石海峡の東側に位置し、潮通しが抜群に良いためグレがよく釣れる一文字として人気がある。多くの釣人は外向きのテトラから狙うが、実は内向きのあるポイント(渡船乗り場正面の東側の一部など)でもグレは釣れる。ただしそこに限っては「沖合に潮と潮がせめぎ合う潮ヨレができる時」でないとまずグレは多く釣れない。
 つまりこのポイントではグレが釣れる釣れないは潮ヨレの有無に大きく左右されるのだ。肝心の潮ヨレは日々変化する潮汐の影響で、日によってできたりできなかったりする。
 潮ヨレができる日、その日に釣行すればグレはかなりの高確率で釣れるのではないか…。今回はその激流ができる日時をパソコンを活用して突き止め、グレが必ず釣れる日を予測し、そして実際に釣行してみようというわけだ。

(キャプション)垂水沖一文字、東側内向きのポイントと潮ヨレ。ゴウゴウと流れ、まるで川のようになる。普段は何でもない水面なのだが、沖に潮ヨレ(中央の白い筋)ができるとグレの一級ポイントに変わる。

STEP1
まずは過去の垂水一文字の釣行記録を探る

 私は過去の釣行データをパソコンのデータベースに記録している。日時、場所、時間、狙いの魚、潮、干満時間、釣果、仕掛け、天候等の項目別に1釣行1シートでまとめてあり、1992年から始めて今では300件を超えている。

 まずはこれで、私が垂水沖一文字へ行ってグレが釣れた日を検索してみよう。人間がパソコンに絶対かなわない能力の筆頭が、膨大な情報群の中から必要なものだけを瞬時に取り出すという検索能力だ(ちなみにボウズの日は何回あったかを検索してみたら全319件中、完全な丸ボウズは101件、つまり約3回の釣行に1回はクーラー空っぽでうなだれて帰ってきてるのですね、トホホ……)。

 さて目的のデータを検索してみよう。項目として「垂水沖一文字の内向き(正面の船着きの東側)」に「グレを狙って出かけ」、かつ「グレが釣れた日」で検索をかけると…おお、出たゾ出たゾ、ずらりと13件。フムフム、これをじっくり見てみると…。時期は10月から11月に集中している。いずれも釣れたのは朝のうちだ。そしてすべての釣行日に共通しているのは午前8時前後から右から左に向かって強い潮流が起こり、そこに潮ヨレがたくさん出ていたことだ。ちなみに釣れなかった日のデータを見てみたが、いずれも潮ヨレはなかったと記録されている。

STEP2
潮汐予測ソフトでタイドグラフを見る

次はこれらグレの釣れた日の潮汐はどうなっていたかを潮汐予測ソフト「CHOSK. EXE」(※1)で見てみよう。

 このソフトは場所を指定し日付を入力すれば、たちどころにその潮汐を日、週、月単位でグラフで示してくれる。日付は過去、未来を問わないので、過去の釣行日の潮汐を確かめたり、よく釣れそうな潮汐の日を狙って釣行日を決めたりもできる。また干満の正確な時刻と潮位、日の出、日の入りの時間や月齢等も合わせて表記される。釣行前に干満時刻を調べる釣人は多いが、このソフトを使うと時刻だけではわからない潮の動きが見えてくる。



 先に検索した釣行記録から比較的グレがよく釣れた日を4件選んでその日の潮汐グラフを出してみた。

(キャプション) 92/10/17、92/10/26、92/11/11、92/11/16の垂水の潮汐グラフ。グレがよく釣れた日の垂水の潮汐グラフ。縦軸が潮位(cm)、横軸が時間。左下の干潮時間に注目。いずれも午前2時〜5時くらいの間に干潮を迎えている。その潮位差はすべて1m前後。グラフで見ると、潮汐時刻表だけではわからない潮の干満の姿がよく見えてくる。

 よく見比べてみると曲線の形に何か同じ法則性があることに気づくだろう。そう、いずれも午前2時から5時くらいまでの間に干潮を迎えているのだ。この時間帯に干潮を迎えると、前述のようにちょうど午前8時前後にポイントに潮ヨレが起き始めているのである。ちなみにこれら5つのデータのうち3回は小潮、2回は大潮の日だ。

 さらにこのソフトは潮位も出るので干満の潮位を比べてみると、未明の干潮と次の満潮との潮位差は1件を除いてすべて100pを超えている(1件は96cm)。以上のことから、釣り始める早朝の時間帯に潮ヨレができるか否かは

・午前2〜5時に干潮時間を迎え
・大潮か小潮で
・干満の潮位差が100cm以上ある日
 と推測した。

※1 潮汐予測ソフト。原作は菊池晃氏作成のDOS版「TIDE63.EXE」。つりのともの巻末にある毎月の潮汐グラフは氏の許可を得て掲載させていただいているもの。これに三浦高志氏が手を加えウィンドウズ版「CHOSK.EXE」を作成した。パソコン通信「NIFTY-Serve」の「釣りフォーラム(総合)」のライブラリに登録されている。

※補足/現在はソフトも進化し、大手検索エンジンで「Tide for win」で検索すると、最新版をダウンロードできる。

STEP3
あとは同じグラフ曲線の日を探し出せばOK

ここまできたら後はカンタン。同じ時期でこれと同じ曲線になっている日を探して釣行すればいいわけだ。探してみると10月15日のグラフがかなり条件に合っている。条件のひとつである大潮か小潮ではなく、中潮というのが少し気がかりだが、これ以上日にちをズラすと原稿締め切りに間に合わないということもあり、この日を“グレ必釣の日”と予測し、実釣に行ってみることにした。もしグレが釣れなかったら本企画の土台が崩れてしまうということで、内心ヒヤヒヤものである。

(キャプション)釣行を決めた 96/10/15 の潮汐。先の4点の曲線とよく似ている。

STEP4
さて実釣は……

深夜3時半。阪神高速道路を快適に飛ばして垂水漁港の駐車場に着いた。車中でしばらく仮眠のあと、近くのまるは釣具でエサのイシゴカイを買って渡船乗り場へ並んだ。平日の一番船は午前6時。一文字は目の前なのであっという間にポイントに着いてしまう。
 5.3mの磯竿1号にハリスは1.5号を1ヒロ半。潮のヨレを釣るので、その間にBを3〜4個付けるためウキは4B以上の負荷がいる。タナは3〜5ヒロの遊動仕掛。6pほどのイシゴカイを一匹丸ごと付ける。

 午前7時半頃、予想どおり右側から潮が流れ込み、潮ヨレが出来始める。時間とともにそれがだんだんと強くなっていくのがわかる。左右からせめぎ合いながら徐々に左へと流れる潮ヨレの間にやや遠投すると、ウキはまるで沸騰した鍋の中に放り込まれたように忙しく潮にもまれながら流れていく。時おり小さなウズの中にスポリと突然ウキが引き込まれるが、これはアタリではなくあまりに強い水流にウキが引っ張られたためだ。

 特望の一匹目がきたのは午前8時を少し回った頃だった。遠くに流れるウキを凝視していたら、明らかに潮の引きのせいではない、生き物特有の強い引きがトップに見えた。
 ウキが沈みきるのをじっと待ってアワせると竿が大きく曲がる。ポンピングしながらリールを巻き、獲物を次第に手元に寄せてくる。グレだ。一気に抜き上げると、海の色そのままのグレが重い音をたててコンクリート上に落ちた。22cmほどでちょっと小さいが、波止で釣れるグレとしては納得サイズだろう。このあと同じようなグレが飽きない間隔で釣れ続いた。

 やがて午前10時半を過ぎた頃、ヨレが次第に弱まり、単なる潮の流れ込みになっていった。それとともにグレの反応もピタリと止まったので納竿とした。結果は25pを頭に5匹…西の方の外向きでは何十匹と上がるらしいので大した釣果ではないが“してやったり”の釣りとなったので内心大いにホッとした

●交通/阪神高速若宮出口を出て国道2号線を西へ。垂水漁港の看板を左折するとまるは釣具がある。駐車場、渡船乗り場はこの先を左折。
●問い合わせ/まるは釣り具垂水店 TEL.078-705-0841
●渡 船/船長丸
TEL.078-707-7181(水曜日休み)

月刊つりのとも/96年12月号掲載



<編集後記より>

◆2色ページ特集「パソコンで探る、グレが必ず釣れる日」はいかがでしたか?パソコン活用で必ずグレを釣るだなんてエラそうに書いておいて、もし釣れなかったらどうしようと内心ハラハラものでした。 もし実釣してボウズだったら土下座した姿を写真にとって載せるつもりでしたので、正直ホッとしています。 今回は潮通しの強い垂水の波止という、ちょっと特殊な釣場を限定して探りましたがもう少しデータがあれば他の釣りにも活用できると思います。

ただし、自分一人のデータだけでは難しそうですね。より多くの釣人の幅広いデータを集めてこのように分析できればひょっとして……。 ただし、忘れてならないのは釣りは自然相手の不確定な遊びということ。潮以外にも天候、水温、風向き、魚の食い気等、無数の要素が複雑に影響し合っていることをキモに銘じておきたいものです。

また、読者の中にはパソコン使ってまで釣りなんて…と思う方もおられるかもしれませんが、私の頭の中ではパソコン活用は、シカケを作り、道具を手入れしながらニタニタと釣魚への思いを馳せるあの楽しさと全く同じ感覚なのです。

私にとってパソコンはリールやロッド、ウキなどと同じく、私の釣りの楽しみを大きく広げてくれる大事な釣り道具のひとつというわけです。




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「潮汐予測ソフトTide for win」は下記より無料でダウンロードできます。
http://fmie.cside7.com/program/tide.html