月刊つりのとも


緊急取材
迷惑釣人もう限界!
琵琶湖片山港、住民たちの悲鳴

[つりのとも98/8月号]
取材6月13日 編集部/武富純一


 片山港は釣り禁止です…話は編集部のパソコンにこんな一通の電子メイルが届いたことから始まる。当社は昨年からインターネット上に「つりのともホームページ」を設けているのだが、どうやらその内容を見ての抗議メイルらしい。

 片山港?、はて、どこだ?。「もう少し詳しく知らせてくださいませんか」…そう返信したら、場所と同時に釣人によるとんでもない被害報告が送られてきた。問題の場所は琵琶湖北部、伊香郡高月町にある片山港。

 メイルの主は平井満晴さんという片山区の区長さんだった。さっそく弊社発行の「バスマップ琵琶湖全周」で探してみると、琵琶湖の最北部に小さな漁港として掲載され、しかもこのエリアは好ポイントとして紹介されていた。

予想外の被害内容

 平井区長さんからのメイルの内容を要約してみよう。
…ここ数年来、もはや一部とは言い難いバス釣りの人のイタズラにほとほと困り果て、もはや釣人のマナーなど信用できない事態にまでなっています。ゴミの放置、トイレ、駐車等、釣人の利己主義としか思えないような行動は数え上げればキリがありません。
 自分に邪魔となればチェーンを平気で切って入る、車止めを移動させる、コンクリートの縁石を割って入る、係留された漁船に乗って釣る、引っかかったりもつれた糸やハリはほったらかし、釣った魚は陸に放り投げてほったらかし…。
 注意しようものなら「ここは誰のものや、オマエらにそんなこという権利があるんか!」と言われます。

 漁師の舟に置いてある竿やタモは使い放題、盗み放題。イケスに魚など入れておこうものなら、まず持って帰られます。
 また、大小便はそこら中でやり放題。困った挙げ句、舟の中の舳先の下で大便をする。近くの草むらは、うっかり入ると犬ではなく人間のウンコを踏むことになります。

 車は深夜12時前に着いて民家の横でエンジンかけっぱなしで朝まで寝る。近くの住民はエンジン音や人の声で熟睡できません。
また、車を住人の駐車スペースに停め、停める場所がないとそこら中に車を置いています。

 もう住民は耐え切れなくなっており、滋賀県や高月町や警察にもお願いし、また当村としても住民の不便を我慢してでも規制しようというような動きになってきています…。

 ウ〜ム…文面から察するに、もはや苦情というよりも悲鳴に近い状況のようだ。 住民たちは困り果て、もう釣人を排除する強行手段に出なければ安心で平和な時間が過ごせないと考えるようにまでなってきているという。

 マナーの悪い釣人たちのこうした害は、別に今に始まったことではなく、海でも川でも常に取りざたされる問題だが、正直言ってここまでひどいとは思わなかった。

さっそく取材に

 とにかく一度、この目で見てみないことにはということで、さっそく取材させてもらうことにした。

 本誌「つりのとも」はあくまで釣り愛好者のための雑誌。この記事を載せることで正義漢ぶるつもりも自然保護を叫ぶつもりも毛頭ない。
 ただ、日ごろ水辺で遊ばせてもらっている釣人の雑誌だからこそ指摘の内容は無視できないし、記事にすることでわずかでも現代の釣人たちへ一考の材料になればと思ったのだ。

 取材日はあいにくと雨。予定より早く到着したので、さっそく片山漁港を覗いてみたら、すでに何人もの釣人たちがルアーを投げていた。
 たまたま通りかかったオバサンに話しかけてみたら、前述の被害話が次々と飛び出してきた。

 釣人が無造作に放置した魚は猫を寄せ、腐れば臭いがひどいという。また、近くの公園にドカンが置いてあるのだが、この中をトイレに使われて、子供が遊ぶこともできないらしい。見つけるたびに注意するのだが、次々と新顔がやってくるからキリがないと嘆いていた。

 やがてやって来た平井区長さんと公民館の上がり口に掛け、問わず語りにいろいろ思いを述べていただいた。
 平井さんによれば、住民からの被害の苦情は今年になってから急増したという。バスブームの風がまだまだ吹いている証だろう。
 トイレは設置可能なのだが、きれいに使ってもらえるかという疑問やメンテナンスを考えると慎重にならざるをえなくなってしまうという。また、あまりの放埒ぶりを見かねて厳しく注意する住民もあるが、後で仕返しされるのが恐いので、なかなか強い態度に出られない人も多いという。

できれば避けたい強行手段
 平井さんとの話の後、漁港内をもう一度巡ってみた。駐車された車のプレートを見ると、琵琶湖の最北部だけに愛知、岐阜等のナンバーが多い。

 雨がかなり降っていたが、それでも何人かの釣人たちが竿を振っていた。声をかけて、今、この場所はこんな事になってるのですが、と意見を聞いてみると、皆一様に「エッ!そこまでひどいんですか?」と逆に驚いていた。当たり前の事なのだが、ちゃんと周りに気を使いながら釣りしてる人たちもいっぱいいるのだ。区長さんもその点には大いに理解があり、すべての釣人が悪と決めつけているわけではない。

 釣人として、というよりも、そのもっと根底にある「人間」としてのモラルが大きく問われている。漁師さんの網にルアーが掛かれば、その網を丸く切り取ってまでルアーを回収する「オレの釣りのジャマする奴は何であっても許さない」という超利己的な思考の釣人たちに対し「少なくとも、もし自分がされたらイヤな事はして帰らないようにしてほしい」と平井さんは訴える。

 舟に勝手に上がり込む行為も「もし自分の車の中に勝手に入られたら気分が悪いでしょ? それと同じだと思うんです」。

 できる事なら強行手段はやりたくない。でもここまでひどいとなればやらざるを得ない。当分は監視の目を光らせながら成り行きを見守り、もしこのまま被害が変わらないようだと強行手段に打って出るしかないだろう。
「もちろんそこまではできればしたくないのですが…」と平井さんは最後の最後まで揺れていた。

 もし完全に「釣人シャットアウト」にまでなれば、同じような被害を受けてる近隣の漁港も黙っていないに違いない。そうなれば、一番困ってしまうのは当の釣人たちのはずなのだが…。