Web版つりのとも


スピニングリール
あなたは右ハンドル?、左ハンドル?


 スピニングリール…磯の上物釣りをする人で、このリールのお世話にならない人はいないだろう。単なる糸巻き的な役割を越えて操作性や機能性、デザイン等に優れたものが各メーカーより製品化されている。磯釣りでは自在に糸の出し入れの調整が効くレバーブレーキ付きが人気を呼んでいる。
 さて、今回はそのスピニングリールのハンドルの向きにスポットを当ててみた。右ハンドルか左ハンドルか…そんなの各人の勝手でしょ! といえばそれまでの事なのだが、右と左、それぞれにしっかり特性とメリットがあるようなのだ。
(まとめ/編集部 武富純一)


 いま仮に、竿を手にしてリールハンドルを回す動作をやってみてほしい。あなたの右手は竿を握っていますか?、それともリールハンドルを握っていますか?。この時点で、どっちだったか迷ってしまう人もいるかもしれない。
 今のスピニングールのハンドルは、ネジ1本で簡単に左右の付け替えができるから各自の好みで自由にセットすれば良いわけだが、そもそもの出荷時はどうセットされているのだろうか?

 リールメーカーのダイワ精工(株)にこの疑問をぶつけてみた。
 それによると一般的なスピニングリールは右ハンドルにセットして出荷されているという。また、投げ釣り用も右ハンドルでの出荷だ。
 ただ、レバーブレーキ付きやルアー用は左ハンドルで出荷しているという。
 なぜかそうなっているかと言えば「そのように使う人の割合が多い方に合わせている」とのこと。どうやら釣りのジャンルによる違いがあるようだ。

 また、初の国産リールメーカーの昔話として、ある本に載っていたのは“もともとリールは左ハンドルで外国から入ってきて、左ハンドルのみで生産していたのだが、それがいつの頃からか右ハンドルへの注文が多くなってきて「ヘンだなあ、ヘンだなあ?」と思いながらも、それが売れるからひたすら作りまくった…”というもの。(金森直治著「風流釣りばなし」)

 どうやらスピニングリールは元々は左ハンドルからスタートしたものらしい。それがいつの間にか分派して右ハンドルが主流になってしまったようだ。
 では、どうしてこんなことになってしまったのだろう?

竿とリール、利き腕をどちらに託すか?

 人には利き腕というものがある。一般に右利きの人は右手で文字を書いたりボールを投げたりハシを持ったりする。これらを左手でやるとなると、ギクシャクとかなりの苦労を要することになる。

 では、釣りの場合、この利き腕を「リールのハンドルを巻く」という動作と「竿を持つ」動作のうち、どちらに託すのが本筋なのだろうか?
 仮に「右利きで右ハンドルの人」と「右利きで左ハンドルの人」にわけて考えてみた。

右利きで右ハンドル
リールハンドルを巻く動作は利き腕で、というスタイル。これは比較的わかりやすい。
 ビギナーが釣りをすると、彼らの動作は竿さばきではなく、リールハンドルを回すことに目が行く。その証拠に初心者にサビキ釣りをさせたら、ほぼ間違いなく夢中でハンドルを巻き、穂先など目にはなく、ついには仕掛けまで巻き込んでしまう。

 リールのハンドルを回すという動作の方が竿を握る動作より目立って見えてしまうので、これを自然に利き腕でやってしまうのだろう。竿を持つという動作はハンドルを撒く動作と比べると、初心者には確かに地味に映る。

 生まれて初めて右ハンドルリールに触れた右利きの人は、長じて釣りが上達しても「原初の感覚」のまま釣りを続けるので、右ハンドルの人が多くなってしまったのだろうか、とも考えてしまう。
 先の投げ釣りはリールを巻く事が大きな動作に見える釣りだから、右ハンドル出荷もうなづけるというわけだ。

右利きで左ハンドル
竿は魚のアタリをとったり掛けた魚をあしらうという大事な道具。だからそれを持つ手は当然、利き腕の方でやった方が有利だという考えだ。
 ルアーのバス釣り、特にワームなどを使う場合は、竿のアタリをかなり敏感にとっていかなければならない。こうした、竿からのアタリを敏感にとる釣りは利き腕=竿でないと難しいだろう。バス釣り派に左ハンドルが多いのはこのせいだろう。(ただし、クランクベイト等、重いルアーの場合は右ハンドルになるという)。

 リールの役割は出過ぎた糸を巻き取ることだから、利き腕じゃなくても何とかできる。そう考えても竿の方を利き腕に任すのは明確だ。
 磯釣りの盛んな徳島の阿波釣法の基本は右利き=左ハンドルである。

 また、トーナメンターの宮川 明さん(右利き)は、当初、右ハンドルで磯釣りを始めたが、ある時、エサ付けから魚の取り込みまでの一連の動作の中で、竿とリールを持ち変える数が7回にもなって時間のロスが大きい事に気づき、左ハンドルにスタイルを変えるべく猛特訓したそうだ。「右手は竿とハリ、左手はリールとシャク、それに取り込み時のタモ。このように右左の役割分担をはっきりさせれば、ずっと右手から竿を離すことはない」という。
 レバーブレーキ付きのリールが左ハンドルで出荷されるのは、こうしたスタイルの人が多く使うリールだからだろう。


■編集部とその周辺の釣人11人に聞きました。「あなたの磯釣りスタイルは?」
氏名利き腕 ハンドル
を持つ手
マキエ
K.M
A.M
M.H
両方
J.T
Y.K
T.N
J.K
K.A
M.K
両方
K.O
Y.H



マキエワークはどちらの手?

 さて、磯釣りには竿とリール操作に加えて、もうひとつやらねばならない大切な要素がある。マキエだ。ただでさえ竿とリール操作で両手が忙しいのに、これに加えてマキエもしないと磯釣りは成り立たない。考えてみれば忙しい釣りではある。
 一体、マキエはどちらの手でやったらよいのだろう?
 実は、竿とリールをどちらの手に…という問題はこのマキエと密接な関係がある。

 右利き=右ハンドルなら、これは楽だ。マキエは竿を持ったまま利き腕で撒けるから、コントロールも効くし、動作に無理がない。
 逆に困るのは右利き=左ハンドルの人だ。
 利き腕は竿でふさがっているので、利き腕ではない左手でコントロールよくマキエをするには、初心者にとってはかなりの難行苦行である。
 慣れてない人はマキエのたびに竿を持ち変えて、右手でマキエをしている。
 もちろん、それはそれで別に構わないわけだが、マキエのたびに持ち替えるという動作が増えることになる。

 また、フカセ釣りの基本である「マキエとサシエの一致」をするためには、竿操作をしつつマキエができるのが理想だ。そうなるとマキエは当然、左手で撒けたら完璧ということになる。
 先に紹介した宮川さんは、左手でのマキエワークを猛練習で克服したそうだ。

しっくりきてたらそれが一番

 以上の事から総合的に考えると、右利きの人は左ハンドルというのがオススメのようではある。
 ただし、これは、いささか決めつけっぽいのも事実。
 紀東の名手、三原憲作さんは右利きで右ハンドルだが「確かに持ち変えの動作が多くなるけど、一番自分にしっくりくるからこれで全く問題無し」とはっきり主張する。竿の持ち変えにしてもリールの巻き方にしても、そのスピードが他の人より断然速いので何も問題にはならないという。

 また、釣具店の店員の経験がある釣人に聞いた話では、釣りが初めてのお客さんなら、まず右利きか左利きかを聞き、その上で感覚的にしっくりとくる側にハンドルを付けて買ってもらうようにしているという。
 さて、あなたは右ハンドル、左ハンドル、どちら?

■竿持ってリール巻いてマキエして…磯釣り師は忙しいのだ。


コラム
左ハンドルならではの技、発見。
右ハンドルでできなくて左ハンドルならできるという技がある。写真のようにスプールに指を掛けて止めながらリールの回転を調整し、糸の出をコントロールすることだ。実際にやってみると解るが、右ハンドルでこれをやろうとするとツメ側にスプールが当たってしまって不可能だ。