Web版つりのとも


美浜原発沖のチダイ 98/12月号


●南村健治

10月11日。
今日はクラブの例会であります。
行先は福井県美浜町早瀬。
この辺りには久々子(くぐし)湖があります。
僕は長いこと(くくしこ)と思っていました。
長いこと、というのは十五年もの間のことです。
十五年の昔、僕はこの辺りへキス釣りに来ていました。
ほんとうによくきていました。
きっかけは雨です。
それも、大雨。
ある年のキスのシーズン。
橋本さんの誘いで、ニコニコと出かけることになったのであります。
その日、大阪は晴れ。
よく日、久々子の海は雨。
それも大雨。
人も羨む大雨であります。
船頭は出船を危ぶみ。僕はふとんのなか。
田中さんは朝酒を飲み橋本さんは、なんと仕度をしておるのであります。
カッパを厳重に着込み。エサ箱を持って。
「二時間ほど頑張ろや」と、これまた言うのです。
こうなれば仕方ありません。
僕は泣きそうになりながら。
田中さんはそれでもゆうゆうと。橋本さんのあとをついていったのであります。ところが、あ一た。
大正解。
釣れた。釣れた。
仕掛を入れると。釣れる。
仕掛をあげると。釣れる。
どないしても。何をしても。キスが釣れる。
もう、大変。誰もやめると言わないのであります。
船頭が珍しがるほどにキスが釣れたのであります。
結局エサをつかい果たして、納竿。
と、そんなことがキッカケの久々子通いであったのです。
で、久々子が(くぐし)と判明したのは今回のチダイ釣り。十五年振りの久々子なので、ふと『遊々いらすとマップ』をみておりました。『若狭東部の海釣り』
三方五湖があって。日向湖があって。久々子湖…。
そうそう、この辺り。
僕の記憶をたどっておりますと。100ページ左下。
久々子と載っておるのです。僕はことあるごとに恥をかいておったのです。(くくし)と言い張っておったのです。
持っとくもんです。『遊々マップ』
読んどくもんです。『いらすとマップ』
で、もうひとつ判明したことがあります。久々子湖のハゼ。僕らは何回かの釣行の時、久々子湖でハゼを釣りました。
早瀬橋の袂の船着場でハゼを釣って遊んでいたのです。
ハゼもよく釣れました。しかも大きなハゼ。
でも、チョッと違うのです。
色が黒いというか。体つきが粗いというか。
飴色をしていないのです。
ヘンなハゼや、という印象であったのです。
このハゼ、『ウロハゼ』というのですね。
先の『いらすとマップ』99ページ。
久々子湖で釣れる魚種のなかに、
『ウロハゼ』というのが載っていました。
『釣の友社』はスゴイですね。
並の雑誌社なら、全部まとめて『ハゼ』で済ましているかもしれません。スタッフがちゃんとしておるのですね。
エェ加減で、その場凌ぎの僕なんか、頭の下がる思いです。

と、まあ。そんな、こんながあって。
今日は快晴。チダイ釣りであります。
アミカゴにコマセを詰めて。
キュウキュウ詰めて。
いえいえ、ホンワカ詰めて。
仕掛をボチャン。竿をグイツ。
グイッ、グイッあおってマキエを効かせます。
飛びつくようなアタリで。チダイ。
「チョッと小振りやなあ」
「上のほう、タナをあげてみて」
なるほど、船頭のいうとおり。こんどはよい型のチダイ。
和田さんはトリプル。
皆がニコニコしていると。
トモの方が勇み立って。気合の入ったやりとり。
バシャバシャとタモで掬ったのは、ハマチ。
矢田さんの嬉しそうな顔。
パチリンコと記念写真。
船頭が僕に耳打ちしてくれました。
「フカセ釣りにしたらマダイが釣れる」
早速やってみました。
どんどん。どんどん。
糸を送りだして。エサ取り。
糸を送りだして。エサ取り。
まわりではチダイ。どんどん。チダイ。
フカセ釣りはあきらめました。
僕もチダイ。どんどんチダイ。
ああ嬉し。船頭は僕らの顔も名前も忘れていましたが、最後にチラッと目が合って。
想い出したような。そうでないような…。

■問い合わせ
福井県美浜町早瀬/上喜釣船
TEL.0770・32・1082
(俳人・阪神沖釣クラブ)