Web版つりのとも


淡路島福良沖のコウイカ 99/1月号


●南村健治

初体験をしてきました。
コウイカ釣りです。
地元の人はスミイカとかハリイカとか呼んでいるようです。
イカは土地によって呼び名が変わります。
スルメイカのことをマイカと呼ぶ地方があります。
僕らは、マイカは白イカのことを指し。
白イカは赤イカとも呼ばれ。
赤イカは赤イカで本物の、図体のでかい赤イカがおって。
その赤イカがミズイカと呼ばれ。
ミズイカがアオリイカで。
コウイカがスミイカであり。
なんたらが、かんたらで
かんたらが、あんたらで
と、延々と続いてしまいそうで…。
これに土地の名をあてはめていくと、もう、大変なのであります。
胴頭の名は内海久米治。84歳。
僕らの知っている船頭の最高齢。
かつては淡路近海のサワラ釣りの名手であったそうな。
海の男はスゴイですね。元気。元気。
84歳でもピョンピョンしてる。
そしてかなりの恥ずかしがりや。
魚を釣ると本当に嬉しそうな顔で。
釣れないと飄々として。
手が皺くちゃで。
顔が皺くちゃで。
身体全部が皺くちゃ。
一緒に銭湯に行きました。
福良にある「宝来場」。
番台のおばさんが、
「おおきにネ」
「おおきにネ」
嬉しそに迎えてくれて。
脱衣場には鍵が取り付けてありません。
あったかそうなお風呂やさん。
田中さんはたるみながら腹が出て。
僕は立派に腹が出張って。
橋本さんは色白でポッチャリと。
和田さんは皺々のチンチンで。
船頭さんはもっと皺皺。
ちょっと熱いけど。
エエお湯ですヨ。
これで明日が大漁なら世界の極楽を独り占め。

11月22日。
船頭の皺くちゃがより皺くちゃになって。
コウイカ釣りのはじまり。
仕掛は図のように手釣り、竿釣りどちらでもよい。
僕は手釣り。
「イカが触ったら味がかわる」
「味がかわるヨ」
僕は最初なんのことかわかりませんでした。
「味がかわる」
「味がかわる」
船は潮上から潮下へ。
ゆっくり流れ。
転進をくりかえしています。
船頭の手が大きく動いて。
素早く。素早く。糸を手繰っていきます。
要領よく海面でスミを吐かせます。
うわッ。ゴッツイ、スミや。
そういえば湯船の中でイカの取り込みについて説明がありました。でも、よう聞きとれんかったのです。地元の漁師言葉が湯殿に反響して、半分以上、わかりませんでした。
「イカの△□××○が………でこうしたら????に!!!の天気がエエの」
まあ、そんな具合でカンを働かせておればなんとかなります。指先がなんだかモゾリと重い。
モゾリ。モゾリ。
重いな。変やな。
船頭さんの見様見真似で腕を高く振りあげて。
ズシリと重い。
素早く。
なんとか。
素早く。
糸を手繰りあげて。
コウイカを取り込みました。
「味がかわる」
指先にモゾッとくることなのですね。
「指先の味がかわる」なかなか渋いやないですか。
深いやないですか。
そんじょ、そこらでは言えません。
竿釣りでは遣えない言葉ですね。
「竿先の味がかわる」
間が抜けて、海へ突きおとされそうですもんね。
田中さんも、今日は手釣り。
最初はなかなかイカがノリませんでした。
誘いもムツカシイのです。
テンヤを踊らせすぎてもダメ。
船頭さんは、チョイチョイ。
チョイチョイ。
休止。
チョイチョイ。
チョイチョイ。
休止。
同じようにやってるつもりでも。
歴然と釣果に差があります。
僕らはただ海底を叩いているようなもの。
砂地なので根掛かりの心配はないけどね。
そんな、こんなでイカのスミを顔面で受けたヒト。
イカテンヤでタコを釣ったヒト。
なんだか急に無口になったヒト。
いろいろあって。
潮の合い間にガシラ釣りも楽しみました。
そうそう。ガシラのエサに最高なのを見つけました。
ブリの腹身の皮。1×4センチぐらいの大きさに切って塩漬けにするのです。
特徴はエサ持ちが良いこと。
柔らかくて食いちぎられないので一片で何匹でも釣れます。ぜひやってみてくらはいませ。
世界の極楽を独り占め…。

(俳人・阪神沖釣クラブ)