Web版つりのとも


沼島のマダイ釣り 99/6月号


●南村健治

沼島へ行ってきました。
今年に入って二回目。
まえは、石鯛狙いでした。
今回は真鯛。非常事態用にガシラ。
こんな言いかたはガシラにワルいけれど、まあ許して下さい。
決してあなどっているわけではないのですから。
今回のメンバーは和田、田中、橋本、南村。
これをAグループ。
前回のメンバーは竹村、矢田、岡部、南村。
これをBグループ。
ぼくは運転免許証を持っていません。
したがって、自動車を運転することができません。
魚釣りにはいつも、自動車の後部座席に隠れるようにして乗せてもらっています。で、ときどき。「まだ、着かへんのかいな」とか。
「あと、どれくらいやねん」とか、
「えらい混んどるやん、もっとすいてる道ないんか」とか、
激励するのです。
それ以外は、寝ています。
だから、道を知りません。
港の風景は確かに頭に入っていますが、道中、どこを走ったのかまるで知りません、今年の一月に、Bグループで行ったときはまさに気が付けば、沼島やったのです。Aグループには問題があります。
沼島の遊漁船は、淡路島の土生港へ迎えにきてくれます。
Aグループの問題点は、その土生港への道順をはっきりと覚えていないのです。
和田紘一。田中澄男。橋本修全。
三人とも、立派にそろっていながら、です。
この三人が一番最近に沼島へ、つまり土生港へ行ったのは、七年前のことなのです。僕が行ったのは三ケ月前。
とうぜん、道がややこしくなると僕に質問が飛んできます。
僕は受け答えに困ります。
なんせ、なにも知らんのです。
でも、一応は、
「う〜ん。あそこの橋のところな、右に曲がるんやったかな」
「左やったかな」
「う〜ん」
「橋なんかなかったかな」
と、できるかぎりあいまいに、それでもしっかり返事をするのです。
出航は6時。
現在時刻は、5時50分。
明石海峡大橋を渡って。高速を南淡三原で降りて。
なんとかいう交差点を曲がって、そこまでは順調だったのです。
しかし、そこから三人の記憶があいまいになっちまったのです。
また、僕に質問が飛んで来ました。
車はかなり山道を走っています。
船はもう土生港に来ているはず。
「こんな山道、走った?」
「うんッ、走った走った」
「もうちょっといったら海が見える、はずやわ」
おしまいのところは小さな声でしたが、確かにこんな山道を抜けると、朝日に輝く海が広がり、沼局の全景が見えてくるはずです。
しかし、走っても。走っても。山道です。
海がありません。
まるで、僕をせめるように山道が続くのです。
もう、6時を過ぎてしまいました。
「知らん、知らん」
「僕のせいではないぞ」
「山道は、山道やってんから」
「ちゃんと、地図持っとけ」と、言いかけた時、木々の間から、海。
海が見えて。
沼島が見えて。
どんどん山道を下ってゆきます。
着いた。着いた。土生港に着いた。
真鯛はギジで釣ります。10cmほどのビニール片。
ピンクやブルー。
黄色のもあります。
これをハリにチョンとつけて。
オモリが海底についたら、徐々にタナを探りながらリールを巻いてゆきます。
底から10mか15m。
ゆっくり。ゆっくり。仕掛を巻きあげてゆきます。
カツ。コツ。
アタリがあっても、あわせてはいけません。
なおも、慎重にリールを巻いてゆきます。
かつて、僕は何度も痛いめにあいました。
竿先が、ゴクゴクゆれて。全身に真鯛の引きが広がって。
もう。辛抱できんようになって。
やっぱり、竿をあおってしまうのです。
でも、今日はそんなことはありませんでした。
アタリが一度もなかったのです。
誰にも無かったのです。
で、非常事態用のガシラが本日の主役となったのです。
ガシラをあなどってはダメであります。

■問い合わせ
南淡町沼島/正漁丸 TEL.0799・57・0659

(俳人・阪神沖釣クラブ)