Web版つりのとも


大分県佐伯・蒲江沖のマダイ 99/7月号


●南村健治

缶ビールをワンカートン。
伏見の銘酒・月の桂のにごり酒を一本。
丹波の銘吟・鬼ころしを二本。
最後に橋本さんのためのウーロン茶をワゴン車に積み込んで、出発であります。
行先は、大分県佐伯の蒲江。
狙いはマダイ。
しかも大っきいマダイ。

メンバーは、田中、矢田、和田のアルコール組とノンアルコールの橋本。
それに清らかな南村。
4月30日の夕刻、六時に大分着。
大分から蒲江港まで車で2時間。
その日はマダイを小手調べに釣って。
あくる5月2日は、これでもかというマダイを本格的に釣って、と、いう真面目な行程なのであります。
で、冒頭のアルコールは真面目の象徴。大宴会をフェリー内の、とある室で開くのであります。
すべての釣りはここから始まる、といっても過言ではありますまい。
ソレソレ。グイグイ。
カンパイ。カンパイ。
ドンドン。グイグイ。
マダイ。
気が付けは船室の小さな窓から朝の光がさし込んで。
名前も知らない酒瓶が、なんだか余分に二、三本転がっていて、フェリーは大分港へ着いていたのであります。
蒲江までの2時間。
終始元気なのは、橋本ただ一人。
清らかな南村は、時勢に押し切られ、早くもダウン。
港に着くと同時に、車酔いにて、ゲロを三発。
それでも、なんとか船に乗り込み健気に仕度を始めるのです。
聞けばマダイは絶不調とのこと。
「クロなら大丈夫」と、船頭が言うのです。
クロというのはグレのこと。
グレ釣りはあまり経験がありません。
イサギを釣っていて、なにかの拍子にグレが釣れるというのはありますが、狙ってグレというのはありません。
「タイ釣りの仕掛でエエ」と、船頭が言うのです。
「イサギも釣れる」と、船頭が言うのです。
「今日はこれでお土産を……」
と、皆の相談がまとまって、グレ釣りの始まりであります。
グレというのは美しい色をしていますね。
ブルーがかった黒というのか。
沖の磯に付いているグレなので格別に美しい色をしているのかもしれません。
僕と和田さんはウキ釣りで。
他の人達はズボ釣りで。
それぞれによく釣れました。
良型のグレをポンポン抜きあげるのです。
タモを使いません。
「タモ、使こたら笑われる」
と、船頭が言うのです。
で、そんなもんかなあと、思いながら、またもや。
ポン。ポン。
グレを抜きあげるのです。
よく釣れました。
本当によく釣れました。

さて、5月2日。
少し予定に狂いが生じましたけれど、今日はマダイを狙います。
「釣れへん」と、船頭は言うのです。
「かまへん」と、皆が言い張って。
港を出たのが、4時30分。
黒々とした海にイカリを打って。
それこそ、本格的に釣りを開始。
スタイルは昨日と同じです。
ウキ流しと、ズボ釣りにわかれて、船頭の合図を待っているのです。
船が潮になじんで、仕掛を入れます。
ウキがピョンと立って。ゆるゆると流れてゆきます。エエ感じです。釣れそうな気配です。三十分。一時間。
陽が完全に昇って。
まだ、誰にもアタリすらありません。
ウム。やはりダメなのかもしれません。
が、しかし、ここで橋本が奥の手を使ったのです。
だれがしてもうまくいかないのですが、橋本さんが使うと成功率が高いのです。方法は簡単です。
油断させるのです。
殺気を消すのです。

例えば、仕掛を入れてから、トイレに立ったり。
余所見をしたり。
弁当を食ったり。
ねッ。
こんなことはよく使う手でしょ。
でも、僕はこんなことをしても釣れたことがありません。
橋本は真剣に言うのです。
「油断させながらでも、竿先をチラチラ見るやろ」
「それが、アカンのやで」
「完全に背中を見せるんや」
今回は、ウーロン茶を飲んでいたそうです。
田中さんが、「アッ、アッ」と、声をあげて。
振り向くと、竿が船縁からひん曲っていたそうです。
写真を見て下さい。
この日はこれ一匹だけ。
船頭に云わせると、まあまあのサイズらしいですが……。

■問い合わせ
大分県佐伯、蒲江/栄行丸TEL.0972・42・0360

(俳人・阪神沖釣クラブ)