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須磨沖の半夜釣り 99/9月号
●南村健治
五十肩になった。 確か、五・六年前にもなった。 五・六年前は40才台だから、四十肩。 症状に違いはないのだが、五十肩のほうが痛みが強い。 もっとも、四十肩の痛みをちゃんと覚えているかと云えば、そんなことはない。 覚えていると、毎日が四十肩で苦痛の連続である。 僕はこの種の病気、いや症状は人生に於いて、一回きりだと思っていた。 だから、今回の左肩の痛みはなにか別の別の要因なのだと思った。 ヘンなことはしていないが、ヘンな病気かと思った。 で、病院に行った。 整形外科で診てもらった。 症状を熱心に訴えた。魚釣りに支障を来たす、とはいわなかった。 これは本当。 船上では痛みは感じない。 仕事中はとても痛いのにね。 医者は念のためにレントゲンをとりましょうという。 レントゲンには、ヘンなものは写っていなかった。 正真正銘。清廉潔白。 見事な五十肩であった。 特に治療の方法はないらしい。 注射をするとか。薬を飲むとか。 あまり効き目がないらしい。 四十肩の時はいつのまにかに痛みが消えて、仕事中でさえ普通の状態に戻った。 ほっとけぱ治る。 強いて云うなら温めるのがよいらしい。 風呂で温めなさい。 少しずつ肩を動かしなさい。 医者はそんなアドバイスをしてくれた。 熱心な僕は、その日風呂で温め、少しずつ痛みの出る方向へ肩を上げたり、下げたりした。 少し楽になった、ような気がした。 風呂から上がると、白鳥のような僕の妻が湿布薬を用意してくれていた。 けなげにも、僕のうしろに回り、左肩にやさしくあててくれた。 またもや、少し楽になったような気がした。 が、しかし。ふと、湿布薬の箱に目をやると、 『冷湿布』という字が大きく書かれていた。 7月18日。 今日は須磨沖でキスとスズキを半夜で狙います。 クラブの例会です。26人が四隻に別れて。 僕は、田中さんと田中さんの婿さんと一緒の船になりました。 婿さんの名は吉村さん。 魚釣り未経験。船に弱いのだそうです。 でも、大丈夫。田中さんがついています。 竿の扱い。リールの操作。 仕掛の説明。エサのつけかた。魚のアタリ。 いちいち詳しく、でも、田中さん流に少しぶっきらぼうに説明をしています。 吉村さんは熱心にうなずき。 第一投。 見守る田中さん。頑張る吉村さん。 竿先がブルッとふるえ。 「来たッ」と、いう田中さん。 「エッ、何んのこと」と、いう吉村さん。 無理もありません。 なにがなんだか。ああして。こうして。 突然にブルッと来たのですから。 でも、よいもんですね。 こんなふうにして二人で魚を釣るというのは。 その後、何度かキスのアタリがあったようですが、なかなかハリに掛ってくれません。キス釣りって意外に難しいのですヨ。 田中さんはまだ竿を出していません。 なんとか、一匹。どうしても、一匹。 釣らせてあげたくて。付きっ切りで面倒を見ています。 その甲斐があって。やっと一匹。 にこにこと、一匹。 トラハゼですが。あれまッと釣れました。 後もなんだか、なぜだか肩の荷が下りた気がして。 写真をパチリ。 陽が落ちて。 船に灯りが点いて。 スズキ釣りが始まりました。 エサは青ムシ。 隆起の粗い底を、根掛りに気を付けながら、何度となく仕掛を流しています。 田中さんも、竿を出していますが、音沙汰がありません。 これでは、面目がたたんのとちゃうか、と思っていると。 釣りました。船の灯りが海面を照らすなか、タイが明々と釣れあがってきました。 ここで吉村さんがタモ入れを、となると絵に描いたようなハッピーなのですが。 婿殿船酔いでダウン寸前。 替りに僕がタモで掬って。 ふたたびホッと肩の荷が下りた次第であります……。 ●問い合わせ 兵庫県垂水/沢田釣船TEL.078・752・1915 (俳人・阪神沖釣クラブ)
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