月刊つりのとも



近未来提言 −1− [94年9月号より]



磯釣りに新風 生オキアミからボイルへ……。

まとめ 編集部=武富純一
インタビュー 志賀吉秀氏

 オキアミ…磯釣りを楽しむ人でこのエサのお世話にならない人はいないだろう。登場は昭和50年頃。最初は食用として輸入されたものが、独特の臭気が敬遠され、食用としてはまるで人気がなかった。ところがエサ用に売り出したとたん、抜群に食いの良い万能エサとして爆発的な人気を呼んだことは往年の釣師のよく語るところだ。

その後、現在に至るまで、まさにグレ釣りのスタイルそのものまで変えてしまったオキアミだが、最近ではあまりに大量な使用で、グレの慢性的な満腹状態を引き起こしているのではないかと指摘され始めている。オキアミ登場から約20年。そろそろその使用方法について曲がり角にさしかかっているようだ。そこで生オキアミに変わるエサとして「ボイルしたオキアミの使用はどうだろう」という声が和歌山の一部の釣人たちの間で上がり始めている。四国西南部ではすでによく使われているボイルオキアミだが、「なぜ今、ボイルなのか?」「その長所は?」「グレの食いはどう変わるのか?」……そのあたりを和歌山県釣連盟理事長の志賀吉秀さんにインタビューした。

高タンパク、高脂肪の生オキアミでグレが消化不良に

−−まず、お聞きしたいのですが、今、生オキアミでどんな問題点が起きているのですか?

志賀 一番に言えるのは、生オキアミを使うと魚の食いが長続きしないのです。同じ磯で仮に湖産エビが一ヶ月食いが持つとしたら、生オキアミはものの10日ぐらいで食いが止まってしまう。生オキアミは高タンパク、高脂肪やからあまりのアブラっ気にグレが消化不良を起こしてるのやと思う。その証拠に昔は真夏に臭うて食えなんだグレが、夏でもけっこうおいしい。オキアミを主食にして磯臭さの元であるノリを食む必要がないから磯臭さが身に染みるとこまでいかんのやね。

−−グレの消化不良説はいつごろから言われ出したのですか?

志賀 もうかなり昔からです。オキアミが出だした時からすでにボクらは危惧してた。昔、湖産エビをあまりに使い過ぎたために食いが極端に悪くなったことがあってね、それで試しにオキアミを使ったらまたよう釣れたんよ。それでまた使いすぎて食いが持続しなくなるのを心配して、オキアミはできるだけサシエだけにしようと新聞とかに書いた。みんなその通りやってくれたらええのに、使い分けるのは面倒くさいし、まとめてケースで買うたら安いしでオキアミをドンドン撒きだして歯止めがかからんようになってしもた。当時は「撒けば撒くほど釣れる」というコトバがまかり通ってたしね。グレの消化不良を避けるためにはオキアミはサシエだけに使うのがええんやと何遍いうても、もう言うこと聞いてくれんようになってしもた(笑)。

食いは変わらない。ええとこだらけのボイルオキアミ

−−そこでボイルしたオキアミの登場ですね。

志賀 そうです。ボイルすると脂肪分が抜けてるから消化不良の心配がないし、余っても翌日また使える。エサトリにはとられないし、うれしいのはエサバケツもクサないしね(笑)。ええとこだらけ。なんでこんなええエサ使わんのやと。
 しかも肝心の釣果は変わらん。食いは生の方が確かにええやろけど、エサトリにやられる率は生の方が遥かに高いからね。
−−ボイルを使い始めた当初、どんな感想を持ちましたか?
志賀 こんなエサで食うんかいなと思うた。まあ、オキアミが出た時も同じように思ったけどね。そやけど実績で納得したな。頼りない思たけど結局よう釣れたわけやからね。

−−けれど大半の釣人にはかなり抵抗があるでしょうね。

志賀 確かに紀伊半島ではまだまだ使っている人は少ないけど、こうして釣り連盟とかで問題提起するようになって、ちょっとずつ増えてきてますよ。和歌山ではもうかなりの釣りクラブがボイルでやりだしたからね。実際やってみたら食いは変わらんということが口コミで広まりつつあるようです。

−−ボイルは入手しにくいと聞いていますが……

志賀 少し前まではあまり置いてなかったのですが、今はたいていのエサ屋で置いてます。値段は一割程度高いけどね。粒も揃っていて食用と表示されてる。いい匂いするしね。ビールのあてにもなるよ(笑)。ボイルされてるオキアミはもともと質の高いものを選んで処理してあるので、ええやつでないとボイルになれへん。家で自分でやってみたいう者もおるけど、もともとの質が違うのでこれは無理や(笑)。

アタリは明確、生よりも遅合わせでOK

−−生オキアミと比べて、アタリや食いの違いは?

志賀 もっとも違うのは、ボイルの場合はウキがかなり入ってから合わすという点。これは言うたら昔のグレ釣りの感覚やね。生やったら、ちょっとのアタリで合わしますが…。
 それから、みんな勘違いしてるけど、チョボチョボと当たるのをグレの渋いアタリやと間違えて思てる人が多い。あれはコッパグレやハゲやキタマクラやで。グレはいくら小さくてももっと重みのあるウキ入れをするって。グレはグレらしいアタリしてきよる、そのアタリを間違えてグレの渋いアタリや思うてるんや。ウキの感度や値段ばかり気にして肝心なこと忘れとる人が多いね。これはボイルでも生でも一緒。ただし、ボイルは固い分だけ様子を見なさいということ。あんまり簡単に書いてしもたら本の値打ちなくなるから理屈つけとくけどな(笑)、ボイルは固いだけに生よりはひと呼吸おいて合わせることや。

 それから細かいアタリがある時は仕掛を上げてエサをよく見てほしい。頭も足も丸く残ってるはずや。この残ってるやつにグレは食いにくる。生はグレも食うけど、エサトリも食う。ボイルやったらエサトリにかじられてもいくらか残るからそれにグレがくる。これはグレしか食わんから確率的にグレがよく釣れるということになる。つまりグレがハリに乗ってくる確率が高いんや。ボイルが釣果が上がるのはこういうわけやとぼくは思うんよ。

 前にね、同じ磯でボイルと生を隣同士で試したことがある。ボイルはシャクに少ししか入らへんからチョボチョボとしか撒けん。相手は生やからバシャバシャいっぱい撒く。これでは相手にグレを寄せられると思うたけど、グレはこっちに来るんや。ポロポロ撒いたボイルのマキエがエサトリにかじられずに下までジワッと効いていくんやね。ナマの方は、かじられて小さいカスだけが落ちていく。こっちは大きいのが落ちていく。これで勝つんやから気持ちええもんやで(笑)。

−−これから、ボイルオキアミは普及していくと思いますか?

志賀 これまで言うたような理由と実績、特に食いが長く続くということがみんなに理解されだしたらけっこう早く浸透していくと思ってます。あと集魚剤の使い方を付け足しておきたいのですが、和歌山の多くのグレ釣師は集魚材でボイルをからめてマキエにしています。ボクは集魚材そのものはグレは食わんと思うてるけど、混ぜるオキアミの量が適量になるのでよく使ってます。まあ、それほど大声を出す気はないけど、ボイルを使ったグレ釣りの記事を新聞などにも折々紹介していこうとは思ってます。


 釣りエサに限らず、長年使い慣れたものから新しいものへ変わる時の抵抗感は誰しも大きいもの。オキアミが登場した時に志賀さんが「こんなもんグレが食うんかいな?」と感じたようにボイルへの抵抗感はあなたにもきっとあるに違いない。だが、変革の流れは確実に始まりつつあるようだ。
生かボイルか…最後は釣人であるあなた自身が試して決めてほしい。(編集部)