月刊つりのとも'98年5月号より



村田 満「竿運快釣」-22-
面白くないから釣りに行こう



 人間は、一度つまずきますと、次から次へと、コケ続けます。
 今年の1月、離婚裁判の答弁書を書こうと、法律から心理学の勉強をしていますと−鮎マスターズ(ダイワ精工主催)から友釣り98、友釣りスペシャル等々の今年のムック本の原稿が、見事に「遅刻」し始めます。
 毎週の「つりそく」の原稿も締め切りギリギリの火曜日午後3時でなければ、仕上がりません。
 慣習とは、恐ろしいものです。 この原稿も「遅刻」どころか、「延滞ボツ」になる頃に、ようやく重い腰が上がって、書き始めたのです。
 裁判の答弁書作成は、1回、2回と書くうちに、原理が分かりだします。
 被告は訴状を全面否認すれば「無罪放免」と相成ります。
 これまで、遊びの釣りだけに役立ってきた原稿書きです。
 実生活の間に合うとは…
 ぼくは、もう夢中です。
 なにしろ、親切な弁護士を雇いますと、50万円や100万円はかかるのです。
 単行本1冊書くお金が消えるのです。
 何でそんなゼニを使ってまで裁判をするのでしょうか。
 松田聖子「セクハラ裁判」は、2000万円、こちらの裁判は、500万円の請求です。
 裁判はゼニ儲けなのです。
 笑います。
 正直いいますと、ゼニ儲けというのは、すぐ飽きます。
 ないから儲けたいのです。あれば無用のゼニなのです。
 ぼくにとって、大事なものの順
番は1、命、2、時間、3、釣り、4、仕事、5、人間関係、6、ゼニとなります。
 昨年の後半(7月)から6、ゼニと5の人間関係が崩れだして、4の仕事と3の釣りが、ますます忙しくなりました。
 ゼニがないから仕事をしよう。 面白くないから釣りに行こう。それによって、2時間の活用を考え、1の生命力がついてきたのです。
 ヤッタルデ!

 ぼくは、今シーズン、アユザオを5本新調しました。
 毎年なら2本です。
 なぜ、5本にしたのか、といいますと、昨年の青い鳥(VS銀影競技スペシャル97型)で、その適応範囲の狭さに気がついたからです。
 全能竿、1本ですべてのアユに対応できる、ハズでした。
 それが、むしろ反対だったからです。
 アユザオは、高級化すればするほど、特殊化されて、そのピッタリ度は向上します。
 ただ、逆に状況に合わないと、まるで用をなしません。
 18cm60gの日高川下流のアユに青い鳥の9.5F中硬硬256gがピッタリ適合しました。
 オトリが軽く引けて、掛かりアユも飛びがゆるく引き抜けます。風が吹いてもゆれが少ないし、雨が降っても天糸のからみが起きません。
 エアー設計の先3本は、空気のように自由にあやつれます。
 釣っても釣らなくても、軽い、かるい、コレ以上のサオは、この世に存在しません。
 この青い鳥のために、川に行くのが幸せ、そのものでした。
 ところが、この青い鳥を持って福島県の伊南川へ行きました。
 メタメタです。
 25cm150gのアユには、どうにも止まらない竿に成り下がりました。
 F中硬硬では適合しません。
 大アユにはその1ランク上のT中硬硬でも逃げられました。
 ここで持ったのは早瀬抜(VS銀影競技SG)9.5mでした。
 軽いアユには、軽いサオ。
 重いアユには、重いサオ。
 これからの高級竿は、ゴルフのシャフト並に使い分けねばなりません。
 抱束限定竿(オトリとヒトの自由を束縛して用途が限られるサオ)になりそうです。
 高速伝導管=光ファイバー・ロッドというのが、今年のうたい文句です。
 オトリとヒトの通信革命、実際に、昨年10月8、9日のテストで青い鳥以上に今年のサオの完成度は高かったのです。
 もちろん、問題もありました。 それは、あまりにも美しい曲線を描きすぎたからです。
 優等生は面白くない。
 ソツのないサオは、電圧が落ちるのです。
 光通信というのはホントです。
 しかし、それは単なる瞬間通信に終わるのです。
 拡大通信の、肛門突出の伝導がほしいのです。
 大興奮を生むサオです。
 アユが釣れなければ釣れないほど、サオは興奮を大きくしてくれるモノでなければなりません。
 小さな釣果で、大きく楽しむ。
 ここで、注意をしておきます。 アユが釣れるようになりますとさらにより大きな釣果を求めるようになります。
 こうなると釣れる釣れるで、もっと、もっとで、大きな楽しみどころか、大きな苦しみに変化していくのです。
 精神的にも肉体的にもシンドイ釣りをします。1日14時間を釣る。そんな時は、サオなんて、アユが「たくさん」釣れれば「なんでも」いいのです。
 いまの友釣りで、アユのたくさん釣れるサオは、分かっております。
 過去においては、中硬の長いサオ(10m・11m)でした。
 現在は、カタイ中硬硬の中間の長さのサオ(9.5m、10m)です。大昔(20年前)は、軟調の8.1mというサオが大釣りのサオになりました。
 現在友釣りのサオというのは、長さは中間になり、調子はカタクなり、目方は軽くなっていきます。
 今年のVS銀影競技SGは、スタンダードとスペシャルがあります。両者はまったく同じ目方で同じ仕様になっております。
 25万円平均と35万円平均になっております。
 25万円のスタンダードの方が得する値段設定になっております。 白い鳥と赤い鳥は同じVSの作りで、なぜ、10万円も違うのか。白い鳥が売れるように設定されているのです。赤い鳥の35万円なんて、あほらしくて買えない。
 昨年の10月8日、日高川でそう思いました。釣果62尾(15〜20cm)
 では、ぼくの実際に新調したサオを並べてみます。
 いずれもSGです。
 T中硬9.5m、246g赤い鳥。
 F中硬硬9.5m、256g赤い鳥。
 T中硬硬9.5m、264g赤い鳥。
 T早瀬抜9.5m、281g白い鳥。
 T中硬硬10m、290g白い鳥。
 ほぼ10g差で246〜290gのサオを使い分けます。
 これで今年のアユを釣ります。(大阪市在住)