月刊つりのとも'98年8月号より



村田 満「竿運快釣」-25-
釣れる&ダメ



 毎日同じ川で釣っていても、30尾以上のアユが釣れません。
「なぜだ」
 答えは、一度釣ると二度目はゼロになってしまうからです。
「なぜゼロになるのだ」
 答えは、ソレだけアユがヒトを避けるからなのです。
 平成10年のシーズンは、友釣り初体験の出来事ばかりです。
 5月26日、解禁日は揖保川へ行きました。早朝5時から正午まで7時間やって10尾です。水況最高天気も晴れ「つりのとも」の日高川解禁記事で、嘆き節が聞かれたように、いづこも同じ不調の川でした。
 平成の世の中は、考え方に幅を持たさなければ、アユさえ満足に釣れないのです。両方の予測を立てなければなりません。
例えば…
 解禁だから釣れる。
 解禁だからダメ釣りになる。
 揖保川5月26日も含めて、日高川、有田川なども解禁日はダメ釣りになりました。ただし、解禁だから釣れる人もいるにはいたのです。ぼくも揖保川解禁日は悪い部類に入りました。早朝から正午までの7時間で10尾なのですから。
 ここで、悪い人、ダメな人から良い人、よく釣る人になる変身方法はないのかです。
 5月26日の正午に川をあがってぼくはチエの限りをつくして、午後1時に一発逆転を狙いに行ったのです。
 揖保川の上流引河原に入ります。ゴンボの瀬で午後5時までに29尾を追加します。計39尾(10〜18p)というのが解禁日の釣果でした。
 解禁はダメ。しかし、釣人のいなくなった引河原で、ぼくは4時間で29尾をあげたのです。一発逆転のホームランです。
 アユはヒトを避けます。
 ヒトさえいなくなればアユは釣れます。正直、ぼくは人工放流アユを釣り上げるのに最高の用品を揃えております。
 サオは赤い鳥T中硬硬9.5m。イトは赤プロナイロン0・125号。ハリはV3・7号4本イカリ。解禁日のウブなアユなんか、いちころに釣り上げます。
 ただ、アユがいてくれればの話しです。アユはヒトを避けます。ですから、アユの裏を行かねばなりません。「裏を行く」とは自分の考えの逆も真と考えるのです。考え方に幅をもたすのです。
 ぼくは、6月1日の解禁日に、兵庫県の岸田川に行ってきました。夢の川です。日本海側大豊作、アユ入れ掛り、ヒトは少ない、アユは大きい。太平洋側の河川不調をブッとばすハズでした。ところが、いづこも同じ不調の川です。
 岸田川で午前6時から午前10時まで4時間12尾でした。
 解禁日は釣れる。
 解禁日はダメ。
 はじめから二面釣行を考えていましたから、早々にサオを納めて次の川へ行ったのです。岸田川からお隣りの矢田川へ。来てみて、びっくり仰天です。チャラチャラの流れでした。
 橋の上から流れを見ると、いたる所で、黒い影が走り回ります。同行の陶山武功さんは「釣れる」と言いました。影に活性があったからです。
 味取橋の下へ降りて、オトリを送り出しますと、白い光が川底に起きて、15cmのアユが掛ります。
 オトリを釣りたてにしますと、上へ走ります。「ガッン」白い光が川底で輪を画きます。入れ掛り15連ちゃんです。アホみたいにアユが簡単にタモに取り込めます。
 ぼくはトロ場でやりました。そのしもの瀬では、陶山さんが同じように、ホイホイの出し掛りです。
解禁日だというのに、橋のかみの荒瀬に土地の人が3名いるだけです。信じられないガラ空き状態です。
 ぼくは、15連ちゃんをやって、試しに上の荒瀬の土地の人の所に近づきました。おそらく、ここが一等場所なのでしょう。見るからに黒い大石が並んでいます。ひょっとして、アユが大きいのではないだろうか。
 ワクワクの、ハラハラ15cmの橋の下で釣ったオトリにハナカンをさし込んで送り出します。黒い大石の裏にオトリを沈まして、寝させた赤い鳥VS競技F中硬硬9・5mで、石の横へ引き出します。
 ゴッンです。
 笑います。
 15cmの同じ型が掛ってきます。水中糸赤プロナイロン0・125号で、結節強力300gもあるので、強引に抜きます。というより、15cmのアユですから、暴れ回ることもありません。スコンとタモへ。
 ハリはV3/6・5号4本イカリです。どこでも入れ掛りでした。
結局、夕方までに56尾を取り込んだのです。
■岸田川12尾÷4時間=3尾(1時間平均)。
■矢田川56尾÷6時間=9尾(1時間平均)。
 ヒトの少ない矢田川では、ヒトのいる岸田川より3倍釣れました。
6月1日、2河川を回った合計68尾。もし、朝から矢田川でやっておれば三ケタ釣りの可能性もあったのです。
 釣れる。
 ダメ。
 二面作戦は大成功です。
 釣人の習性としまして、前回釣れた所にこだわります。岸田川も平成9年は釣れました。だから行ったのです。
 この「だから行く」釣行は、今シーズンに限って、改めて下さい。ぼくは、最近それを痛感します。
 5月29日のことです。
 揖保川支流の引原川原で午後4時から午後6時までに37尾をあげました。2時間37尾というのは、キカン銃の入れ掛りです。ハラ、ハラ、ドキ、ドキです。
 期待通り、それからは揖保川へ行く度に、ハラでドキドキの入れ掛りをしました。
 原は釣れる。
 6月14日の日曜日、今シーズンは、まだ1尾しかアユを釣っていない釣歴15年のベテランを案内しました。
 原の三本ある下流の橋の下流でその大ベテランは23尾のアユを釣るのです。雲時々小雨の中で、23尾のアユは一応満足のカズです。
 ハラは釣れる。ぼくは38尾でした。ここでも今年流行のドンデン返しが起きたのです。
 6月16日、午後2時、同じ所へ同じように、釣歴30年の超ベテランを案内します。どうなるのでしょうか。ここに来るまでに、下流で、ぼくは28尾のアユをあげていました。天気は晴、水温17℃あります。
 実績のある釣場ですから、ここにくるまでの下流以上に釣れるハズでした。それが、やれどもやれども反応なしでした。ぼくも超ベテランもあてがハズれて、「キャン」です。サオをたたんで逃げ出したのです。
 なぜ釣れないのか。
 原因も理由もハッキリしています。釣場のいつもヒトのやる所にアユはいなかったのです。
 アユはヒトを避ける。だからヒトを避けないアユのいる所に移れ
ば、アユは釣れます。
 ぼくは、引原川道の駅に午後4時から移ったのです。午後7時40分の暗くなるまでやって、27尾をあげました。合計56尾。超ベテランも8尾でした。
 平成10年の友釣りは、どこへ行くのでも、釣れる、ダメの二面を頭に入れて出かけなければなりません。ハラがいつも好調だったのは、われわれが適当なマをおいて行っていたからです。日曜日に行って火曜日では回復のマがなかったのです。
 単純から複雑へ。まさに、今の世の中そのものです。