月刊つりのとも'98年10月号より



村田 満「竿運快釣」-27-
腕を磨いても試合に勝てなかったのに……

村田 満

 腕を磨いても試合に勝てなかったのに、石を磨いたら、とたん優勝できました

 人工アユは根気がいります。
 オトリを入れてすぐに掛ることはありません。
 止め、待ち、逃げ、掛りまで、3分間なり、5分間なりオトリをそのままにしておきます。
 湖産アユや海産アユのようにポイントにオトリが入れば、いきなりガッンと掛けることはできません。
 イヤ、できるのです。
 今回は、その秘法の公開です。
 平成10年7月19日、ぼくは有田川の「ネコの瀬」にいました。
 午後6時です。
 日曜日で、つい先ほどまで5、6名がサオを出していました。
 吊り橋の上から様子を観察していますと、低い吊り橋の下だけはサオが橋に当るからか、誰もサオを出していません。出したのかもしれませんが、アユが釣れなかったのでしょう。
 左岸の河原の側には、ひとかかえほどの丸石が沈んでいます。
 大石には、茶色のコケがついています。水深はヒザ(50cm)からマタ下(80cm)ぐらいで平瀬状の流れになっています。
 サオ一本分(約10m)さがりますと、そこは早瀬になります。
 この早瀬にもヒトはいません。
 とにかく、この7月19日の時点で有田川でアユが釣れているのは瀬落ちから水深のある淵、黒い岩盤がある点が一番よいと言う話でした。情報ですから、参考になります。
 明日のオーシャン大会のためにぼくは、この吊り橋下の平瀬で石磨きにかかりました。
 午後6時から午後7時まで、深い所は足で、浅い所は手で、コレという丸石と岩盤にミガキをかけたのです。
 もちろん、自分の受け持ち範囲になるだろうサオ三本分(約30m)の間は、川底のゴミ掃除もしておいたのです。
 ビニールや木の枝の沈んでいたのを取り除きました。
 その夜は黒魚王国で泊まります。
 男10人がザコ寝です。
 夜中に小便に起きて二階のハリにゴツッと頭をぶつけて、目から星が出ました。
 今日は晴れかと外を見ると雨が降っていました。
 午前4時起床。
 朝めしは川原のテントでニギリめし2個です。
 アユの友釣りを続ける限り日常の生活は簡素でなければなりません。三食をコンビニの五百円弁当で済ます。それでもゼイタクです。
 正直、わが家では朝昼晩麦めしです。
 大根のヘタをかんでオカズとしています。
 毎日、肉やサカナやとグルメをやっている人達は、アユの友釣りなんかやれないでしょう。粗食に耐える。
 とにかく第8回フィッシング・オーシャンの大会は午前7時から始まりました。参加110名です。
 オトリを各自に配りおえて自分のオトリ2尾を引き船に入れて、めざす吊り橋下へ走ります。
 到着時間が午前7時15分、終了は午前11時ですから午前10時40分に切り上げとします。
 ぼくが吊り橋下に着いた時にはもう上手に選手がサオをのばしていました。
 黄色い帽子をかぶっているのでよく分かります。
 瀬落ちの一等場所には、朝早くから一般の人達が陣取っています。
 ぼくの石を磨いておいた平瀬は誰もいません。
 左岸の河原で9・5m赤い鳥F中硬硬に仕掛水中糸メタル003号をセットして、養殖オトリを送り出します。
 最初の一尾目を「すぐ」釣るために岸よりの石は特に力を入れて磨きました。
 そのミガキ効果かオトリを流れに出さないうちに、ゴツンです。
 野アユがオトリに衝突して、ハリに掛ります。ハリはV5、7号4本イカリでハリスはマジック06号です。
 掛りアユは18cmの有田川としては小の部類に入る代物です。
 これをオトリにして送り出すとまたまた、ガツンです。
 待ったなしの掛りに思わずニッコリです。
 今度はかなり大きいので、吊り橋の下をサオを低くしてくぐり抜けます。
 早瀬に落ち込ませないように、かなり強く岸へよせます。瀬肩ですくい込んだのは、20cmの中型でした。
 ぼくは磨き石の効果に、自信と確信を持ちました。
 この20cmをオトリにして送り出すと、三尾目がガツンです。
 オール背掛りに本日の試合はいただき、優勝だと思いました。
 そこで、ナイロン糸とハリのテストをすることにしました。
 なにしろ釣る時間は3時間25分もあります。
 アユを3尾釣れば予選は通過できると予想していました。
 もう、その3尾は15分間で釣りあげてしまいました。
 後は決勝戦のためのアタリバリとアタリイトのテストということです。
 水中糸はナイロン02号、ハリはV3、7・5号4本イカリにしてみました。
 オトリを吊り橋の真下から下流の瀬肩へ出していきます。
 ガツンです。
 やったで、サオを立てると、ススーです。
 オトリだけがあがってきました。
 ナイロンが合わないのか。
 ハリが刺り込まないのか。
 もう一度、やってみます。
 今度も少し沖で、ガツンです。
 サオを立てると、オトリだけが水面に顔を出します。
 三連発の掛りの後、イトとハリを替えて二連発のハズシです。
 ナイロン糸の軽さでアユを釣るには、ハリはV3のハヤガケ型よりもV5の狐型が合うのでしょう。
 すると、今度はガツンときて、グーと引きます。
 ゆっくりタメて、岸によせて、金魚すくいですくい込みます。
 20cmのアユでした。
 ハリはV5、7号4本イカリが合うのです。
 水深が1mまでなのでナイロン02号で、オトリの運転が楽にできます。
 釣場は平瀬状のトロ場より少し流れの速い所です。
 ここで、7号のハリと7・5号のハリを比べます。
 同じ4本イカリでも7・5号ではオトリの行き足が弱まります。
 色々勉強しながら、吊り橋の上下約30mを行ったり来たりして、8尾のアユをあげました。
 試合中のハリ、イトテストで、逃がしたアユは10尾にはなったでしょう。
 ケラレ、バラシなどです。
 予選4時間のトップ釣果は10尾でした。ぼくは8尾の9位です。
 30位タイまで決勝に出られます。
 決勝戦は36名出場で、午前11時30分から午後1時までです。
 ぼくは上流の上限東川橋の左岸の流れに入りました。
 ぼくは早瀬にオトリを出したのですが…掛りません。
 すぐかみの淵に入った選手が、いきなり淵の左岸よりギリギリでアユを掛けます。
 見ていると、口掛りで抜きしなにハズしたのです。
 そうか、淵の深いヘチキワがただ今のポイントか。
 ぼくは、その人のしもへ入って淵の左岸よりへオトリを出していきます。
 ガツンです。
 一尾目は、すぐにきました。
 淵の出から瀬の中へまくれ込んでいくアユをサオを横にして、右岸に寄せます。
 岸のタルミから河原へ引き抜いて受けます。
 それから、入れ掛り4連発です。
 横出し、横走り、横逃げ、とにかく、流れを横切らすオトリ操作が正解になりました。
 午後0時45分までに8尾を取り込んだのです。正味1時間10分ほどの釣りでした。
 第8回フィッシング・オーシャン和歌山有田川の大会は、村田満が優勝したのです。
 そればかりか、予選決勝の合計釣果16尾もトップでした。
 トップ賞の炊飯器もいただきました。25インチのテレビ、扇風機、カップ、福袋、トラックの荷台いっぱいの賞品となったのです。
 第10回のダイワマスターズで、優勝したときよりもうれしかったのです。
 腕をみがくよりも石を磨け!
 なんだか申し訳ありません。
 優勝のコツです。
 具体的すぎるかもしれません。(大阪市在住)