月刊つりのとも'99年3月号より



村田 満「竿運快釣」-32-
オレの歌は藤あや子に歌ってもらいたいのです

村田 満

 平成11年の正月は宇都宮の「きくや」(アユ用品総合問屋)廃業で始まりました。
 2月28日におこなわれる予定だった「きくや」友釣り用品売り出し展は、急遽とりやめとなったのです。
 北関東の友釣り用品市場は、不況のあおりを受けて冷え込んでいるのです。那珂川も鬼怒川も釣れてません。
 せっかくの99年新製品も年始から前途多難を感じさせました。
 それから10、17日の夜にダイワ精工から「例年通り東京Fショー前のアユ用品説明会をやる」という電話がありました。やれやれです。
 弱ったオトリに、やっと野アユが掛った感じです。
 平成10年のぼくの総釣果2949尾、昭和62年(1987年)2884尾以来の12年ぶりの不振でした。
 釣れない平成10年でしたが、新製品は色々あるのです。
 ダイワ精工のアユザオなんかも大アユ用が開発されましたし、数釣り用も完成しています。
 いずれも欲しくなる用品です。
 もし、これが平成6年や8年のよく釣れた年であれば、青い鳥も赤い鳥もサオというサオは大アユの入れ掛りで腰が抜けていたハズです。かわりが欲しい。
『99年新ザオ黒い鳥(ブラック・バード)は超入れ掛りを生む。大アユも小アユも皆釣(かいちょう)になる』
 と、宣伝すれは売れるでしょう。
 黒い鳥の大飛翔、これはこれから始まる渓流解禁で実証されます。
 MK70のコハク本流ザオがアユザオのハシリになります。7mで140gという目方そのものよりも、その感度です。
 目印に出る前に、アタリが手にきます。
 超感度、前感度、大感度、青い鳥の戦略機能をさらに粘り上げた渓流ザオです。
 食い逃げゼロ。
 レーダーにうつる魚影。
 アマゴの進化、学習に追いついたサオです。
 このMK70(エムケイナナマル)よりさらに上なのが、グランドスリム99型黒い鳥です。
 6月のアユ解禁からテストしてきて、9月18〜20日のテレビ撮影3日間で仕上げになりました。
 TV50万円のサオを平成10年の釣れない友釣りに合わしたのです。
 入れ掛りなしのシーズンでしたから、オトリが弱らない点に特に留意して開発されました。
 一尾のオトリを一日引いていても大丈夫。11月13日に、日高川で65尾のアユを一尾のオトリで釣り上げたのです。
 F型でしたが、ウソというほどオトリ長持ちのサオです。
 この黒い鳥の真の目的は大アユの楽な取り込みでした。
 細くしてパワーをつけたサオなのです。
 一見そんな感じがしません。
 99年の新製品は「大アユ対応」が主なテーマなのです。
 もう尺アユが釣れて釣れて98年は15本も出したと、揖保川のプロ陶山武功さんが言っていました。
 ダイワ精工の99型で、尺アユも普通のアユ並みの楽な取り込みになります。
 ただ、注意としてイト切れ事故の多発です。
 サオが強くなれば、イトもそれに合わさなければなりません。
 この点で強いナイロン糸が登場してきました。
 東レのハイパーです。
 これも6月の解禁からテスト・テストで、やわらかいナイロン、かたいナイロン、色々やりました。
 ABCDEFGHIJKと11種類もテストをして比べたのです。
 釣人の好み、釣人の感じは硬いナイロンにマルをつけたのです。
 では、アユはどちらの方を喜ぶか、です。
 ヒトの好みは硬い方です。
 硬い方がサバキやすいし、手にふれた時に、強く感じます。
 硬い糸○
 柔らかい糸×
 アユは、反対でした。
 とくに、25cm前後のアユになりますとやわらかいナイロンです。
 そんなことで、ハイパーはやわらかい糸となりました。
 やわらかい糸は、キズがつきやすく、すぐにヘタる。
 という心配があります。
 ところが10月9日の日高川でのテストで意外な結果が出たのです。
 これは、ナイロン糸開発のナゾになりそうです。
 サラのイトより使ったイトの方が強くなったのです。
 東レの技術開発、正確には東レモノフィラメントですが、岡野さんが「初体験」と首をかしげていました。
 日高川の水にハイパーを漬けると強くなる。
 1日より2日、2日より3日とだんだん強くなれば、ついに一張で一生使えます。
 ほんとうにソレは感じます。
 これまで、ぼくはメタルを多用してきましたが、これはメタルが3日間なり5日間使えたからです。
 作るのに手間をかけても、ナイロンのように朝昼晩と3回も4回もサラに張りかえずに済んだからです。
 入れ掛りの時に、イトを張り替えるのは、大変な気苦労でした。
 ナイロンは、この点で失格だったのです。
 肝心の時にそのまま使えない。
 メタルはドンドンそのまま使える。
 今度のハイパーはこの点が改良されました。
 ナイロンでありながら、使えば使うほど強くなる。
 ハリも今年の新製品は例年以上に多いのです。
 重点開発は3本イカリ専用バリです。
 より早く釣るよりも、より確実に取り込むことに重点を置いたものです。
 ハリの軸の背面加工に工夫をこらして、U字溝やサイドギア加工をしているのです。
 釣人にはわからない細部に工作をほどこして、よりバレない3本イカリを作る。
 3本イカリは、サキガケやハヤガケ型ではうまくいきません。
 狐型になります。
 カツイチの社長の話によりますと「3本イカリ用だけでなく、2本ヤナギ用3本チラシ用のハリまでもこしらえた」らしいのです。
 ピンからキリまで狐型のハリは何んでも揃うそうです。
 では、どうして、わざわざ、3本や2本の掛りの遅い狐型に開発の力を入れるのか。
 ハヤガケのカツイチとして、これまでより早くアユを掛けることに主力をおいてきたのです。
 人工アユになったからです。
 逆の時代です。
 カツイチの場合、97年の超早がけ型でドンづまりになりました。
 早くかけるテーマは、もう達成されたのです。
 昨年、カツイチのハリを使ってぼくは一日219尾のアユを釣り上げました。この時点で早くかけるには意外や意外、狐型がよい、のが分かったのです。
 海産純天然アユでした。
 昨年、湖産アユを一日133尾釣った時も狐型だったのです。
 これは、逆もどりするのが正解と分かりました。
 人工アユの硬い皮フの魚体にはハヤガケ型4本イカリが合います。
 海産、湖産の軟わらかい皮フのアユには、狐型3本イカリがよいのです。
 それにしても、今の時代は面白いのです。
 石川さゆりが長良川の萬サを歌っていました。
 鮎は女に似ている。
 無理とサオがあればいい。
 漫画的に釣る前に半升、釣ってから二升も「仕事酒」を飲むのです。
 酒豪を強調していました。
 飲まず食わず出さずのもう一人のマンがここにいて、長良川を始め日本中のアユを釣りまくっております。
 オレの歌は、藤あや子に歌ってもらいたいのです。
 麦めしと大根(こおこ)で、竿運快釣、人生にハズミがつくのです。
 酒なんか飲んでいたら、判断が狂うよ。
 ハングリーこそ大釣りを生むのです。        (大阪市在住)