月刊つりのとも'99年5月号より



村田 満「竿運快釣」-34-
釣果は竿にあり、腕にあらず

村田 満

 アユ一筋(夏秋)ハエ一筋(冬)アマゴ一筋(春)川一筋(一年中)ことばとしては立派に響きます。春夏秋冬、年中川釣り一筋人間はナニよりも世間から信頼されます。
 あの人は「まじめだ」となります。
 しかし、釣れなくともまじめでは人生、つまらなくなります。釣れてこそ面白くやれるのです。
 ぼくは平成10年6月22日、富山県魚津市の角川で219尾のアユを釣りました。
 朝から晩まで入れ掛り、まさに興奮の一日でした。
 8月18日の新潟県三面川支流の高根川にて、100尾に挑戦して100尾のアユを釣ったのです。
 目的達成で充実感に満ちあふれたのです。
 さらに、9月2日は安曇川下流で意外や意外の133尾のアユが釣れたのです。
 あきらめていた湖産アユの体当りにシビレた一日でした。
 ぼくは、平成10年の友釣りもまんざら捨てたものではない、と分かりました。
 ただし、これ以後12月4日まで友釣りをしながら、一度も満足な釣りがありません。
 釣果(カズ)が満足度・指標のぼくにはアユなら100尾、ハエなら300尾、アマゴは50尾です。これ以上の数をあげますと「ああ、よかった」と感じます。あくまで自分の感情ですから他人は知りません。
 釣れなくとも、自然のおいしい空気を吸うだけで満足というヒトもおります。大会をやって、参加者の喜ぶ顔を見るだけでうれしいヒトもいるのです。そんな他人はともかく。
 自分は自分自身の興奮のために釣りをするのです。
 興奮のために大きな釣果を追うのです。
 では、釣果を追うために何をすべきか。
 今の世の中、寒中の1月、2月に自分を興奮さすだけの大釣りを企画実行できるのか。
 大釣り釣行ができなければ、その釣りはヤル気がしません。
 ぼくは1月、2月に寒バエのXポイント作りにいそしみました。
 ほんとうにそこへ立つだけで、川のハエは川底で、腹をギラギラかえすようになりました。
 2月19日、ハエ177尾まで釣果があがったのです。あと一歩で300尾です。
 放流作戦は成功するかにみえました。
 しかし、です。次回はそこにマキエの袋がほってありました。
 29尾のハエで終了です。誰かが持ち帰ったのです。
 この欲求不満のハケ口を他の釣りに求めなければなりません。
 3月1日のアマゴも日高川龍神で35尾でした。
 あと一歩で満足指数の50尾になったのですが。とにかく、大釣りで、われを忘れる時間を持たなければ、人生やる気がなくなります。
 自分の習性として、体にも気持にも一番効くのが大釣りです。
 食うより飲むよりヤルよりホメられるよりゼニより仕事よりナニより、ぼくには大釣りです。
 正直、冬の川では大釣りで自分を喜ばすのはむずかしいのです。
 ここらで、他の釣りに転向して他の大釣りを味わうことにしました。
 ナニを始めたのか。
 まず、波止のアジ釣りです。
 平成10年12月26日有田川のハエ釣りをしての帰りに糸谷で20cmのアジ5尾でした。
 夜の3時間で5尾のアジは、決して満足のいくカズではありません。ただその強烈な引きに、頭と体がシビレました。
 これは使うサオがVSコハクの6.5m116gだったからです。
 グレザオやチヌザオの200g以上の重竿でやったのでは、強烈ではなく普通の引きだったでしょう。
 80〜100gの魚体重でした。
 2kgや3kgもあるグレやチヌではありません。
 軟竿のアジは面白い。ということで、正月は2日3尾、6日4尾と糸谷へアジです。
 そして、この6日の夜、糸谷で地元のベテランが「戸津井でアジが入れ食い」と教えてくれました。午後9時から、その戸津井へ走ったのです。
 戸津井で午前1時までやって、3時間で23尾のアジをあげたのです。もしこの時、アジ釣りの知識があれば、三ケタ釣りだったでしょう。
 1月12日アジ31尾。なによりもありがたいのは、午後5時まで仕事をしてから釣りに行けることです。アジは「5時から男」でいいのです。
 1月22日91尾、23日36尾、と釣果がノビてきました。
 アジはマキエなのです。
 水マキエで、海面にピシャッとまくより、遠投グレの粉を混入して、アミレンガをダンゴにして、一点集中、ソコにウキを投入する方がよく釣れます。
 ダイワの新鮮パック「遠投グレ」550円が、アジ釣りを変えたのです。
 23日は土曜日でした。
 ものすごい人出でした。
 土曜日の夜から日曜日の朝までは海のお祭りだったのです。
「よし」と思いました。
 ふだんのヒトの少ない日にくれば、アジ入れ食い。腕がシビれてだるくなる。地元のオバアさんでも、クーラー一杯釣っていたのですから。
 1月25日、衣奈の埋立地、午後7時に着きました。
 小雨のち晴の天気で広い岸壁にはネコの子一匹おりません。イヤ、ネコは2、3匹おりました。釣ったアジを狙っていたのです。
 ぼくは23日の夜にやった同じ所に7mのコハクで、電気ウキを振り込みます。
 第一投から、ウキが赤い尾を引いて、海面から海底へ沈みます。
 サッとあげると、グーンです。
 ウキ下4.5m3ヒロなので、6mのサオでは、ウキにアタリが出ると同時に、手にグリグリのアタリがきて、アジの食い込みが悪いのです。前回勉強済みです。
 サオは7mで、3ヒロのウキ下でもそのウキアタリが手にこないのです。
 道糸にゆとりがあるからです。
 長ザオ7mがアジ釣りを楽しくしたのです。
 ただし、午後7時からアジ入れ食いで、8、9、10、11、12、1、2時と7時間やって、ついにサオを持つ右腕の感覚がなくなりました。ビリビリのアジの引きが感じません。体も冷えて来ました。帰ることにしました。
 アジ154尾、9.3kgありました。

 海の大釣りは、コハクの7mから始まりました。
 7mザオは色々あります。
 HZ夕映 7.1中硬硬 177g  4万9千円
 HXヒスイ7.0硬調 199g 
 3万7千円
 HX連山 7.3硬調 193g   3万7千円
 SZコハク 7.1中硬硬 136g 6万5千円
 VSコハク7.0本流零 135g  9万4千円
 これ以外に、幻の名竿となったコハク本流零MK70があります。
 ミャク釣り革命でメバルの食いがビリビリ手にくるのです。
 1月発売と同時に完売、釣具店に注文しても買えないサオとなりました。
 ぼくが実際にMK70を持って、堂ノ浦の6号カセに乗ってみました。
 そのサオの威力効果、メバルの世界がひっくり返ったのです。
 フシ折れの原則というサオ作りの秘法が生かされていたのです。
 もちろん、渓流ザオですから、このサオを持ってアマゴを釣るとアマゴが食いにくる感触がビリビリ感じられるのです。
 人間は二ツのことを知らなければ、人生が豊かになりません。
 それは、釣果ゼロと釣果拡大です。
 無欲と欲望です。
 ゼロのむなしさ、と、大釣りのハズミです。
 ぼくは、大釣りをすることにうしろめたさを感じていました。
 今、60才にして、ソレが消えたのです。ゼロも大釣りも同じなのです。なぜか。次号へ。
(大阪市在住)