月刊つりのとも[98/02]



                        ●編集部 永田 淳

冬場に楽しむ放流釣場
ターゲットの少ないこの季節
手軽にトラウト達と戯れる


 北西の季節風はビンビン吹くし、ガイドはラインを伝わってきた水で凍るし、小雪はちらつくし指先は感覚がないし、おまけに魚は全然釣れへんし…こんな苦行のような釣りをされている方はそんなにはおられないだろうが、真冬の釣りって大体こんな感じだ。

 たしかに生涯のビッグワンに出合える可能性の高い時期でもあるのだが、一発大物か、はたまたボウズかの丁半博奕みたいな釣りなので強くはお薦めはできない。
 そこでもっと楽しく冬場を過ごせるルアー釣りを紹介しよう。タイトルにも掲げた通り、放流釣場の釣り。ニジマスやイワナなどのトラウト類が放流されているんだから簡単だ、なんて思い込んだら大間違い。結構難しいし、練習にもなるのがこの放流釣場。

タックル

 トラウト用のスピニングタックルが基本。ロッドは5フィート前後(約1.5m)のウルトラライトロッド(超軟調竿)でリールは小型スピニングリール。細いラインを使うのでリールのドラグ性能が高いものを。
 ラインは2〜3ポンド(約0.5〜0.8号)のフロロカーボンラインを使用。水の透明度が高いので、水に近い屈折率を持つフロロカーボンラインの方がいいようだ。

 さらにできるだけ自然にルアーを流れに乗せたいということと、トラウト達に気付かれにくいように、また小さいルアーをキャストするので細いラインの方がよい。
 ルアーは2〜3cmほどのミノーと1〜2インチ(約2〜4cm)ほどの白いワームを用意する。ワーム用のフックは管付きマスバリかチヌバリ。ハリ上10cmほどにジンタンの6号くらいの小さいガン玉をつける。いわゆるスプリットショットリグ。

 この他に偏光グラスも用意する。見えている魚に食わせるのだから、見釣りとなる。水中の様子が見えていないとフッキングが遅れるので偏光グラスは必需品だ。
 今回取材した小柿は川幅5mぐらいだったが、川をせき止めて作った池のような管理釣場もある。こういったところでウェーダーを着込んで立ち込んで釣りをする人もいるが、そこまでしなくてもいいのではないかと思う。自然のフィールドで、どうしてもそこまでルアーを届かせないと釣れない、という所ではないのだし、何よりも他の釣人の邪魔をすることになるので、管理釣場では立ち込みは遠慮してもらいたいものだ。

流れに乗せて、ナチュラルドリフト

 さて、釣り方であるが、同行させていただいた矢野貴雄さんのテクニックには少しびっくりした。2インチの白のシャッドテールワームをマスバリにチョン掛けにして流していくだけなのである。
「エ?」と思われる向きもあるだろうが、これでも立派なルアー釣りなのである。
 キャストしては引いてくる、だけがルアーではないのである。
 主に大型は瀬の落ち込みなどの一級ポイントに陣取っているので、落ち込みの少し上流にキャストする。キャストは常に自分より上流にしないと魚は上流を向いているので、自分の姿が魚に丸見えになってしまう。

 流し方はラインを張らず、緩めずといった微妙な具合で。いわゆるナチュラルドリフト。ごく自然にワームを流すように心掛ける。また、いくら魚の目の前を流しても、筋が違うと全然見向きもしてくれない。ちゃんと食ってくる流れの筋というのがあるようなので、その筋に乗るまで何度もしつこく流すようにする。

 食いついたのが視認できたら、手首を返すように「ピシッ」と合わせる。このフッキングが強すぎるとラインが細いので切れてしまうが、弱すぎると、マス類の口は固いのでしっかりと刺さらない。出ているラインの長さを考えて、多くラインが出ているようなら若干強く、少ないようなら心持ち弱くフッキングする。

練習になる取り込み

 相手は養殖魚なので、ファイトはそんなに強烈ではないが、時には50cmクラスも食ってくるので油断はできない。
 30cmクラスなら相当強引に巻き寄せても3ポンドラインならビクともしない。いかに手早く取り込めるかを練習するにはちょうどいいだろう。
 40cmを越えてくるとちょっと手こずるが、まだ余裕を持ってやり取りできる。ラインの限界、ロッドの角度などを知るには格好である。

 50cmクラスだと本当の魚のあしらい方などが要求されるようになる。川中を縦横無尽に走り回るので、ロッドを倒したり、魚について走ったり、後ろに下がったりと限界のファイトが楽しめる。ロッドの弾力を活かしきることが最重要ポイント。普段の釣りではなかなか体験できないスリリングな釣りを楽しめる。

日が陰り出すとチャンス

 昼間はポツポツとしか釣れなかったが、夕暮れが近付くにつれ活性が上がり出す。
暗くなってくると見釣りもできなくなり、ここからは手元にくる微かなアタリのみで合わせることになる。
 これもまた他の釣りへの応用は大いにできる。流れに乗ってラインスラック(糸フケ)が出ているので、手元にくるアタリは極小さい。これを的確にとるテクニックが必要になってくる。
 バス釣りなんかで超ショートバイト(食い込みが浅く、非常に小さいアタリ)というのがあるがそれに似たアタリしかないので、このアタリを見逃さない感覚を養うこともできる。

 以上のように、流れを読む、その流れに的確にルアーをキャストする、細いラインで大型とファイトする、小さいアタリをとる、と管理釣場といえどもあらゆる釣りに応用できるテクニックを高次元で培うことができるのである。
 これらのテクニックはいずれもよく魚が釣れないとできないことなので、その点では管理釣場はちょうどいい。
 ただ魚のいる場所を探す、推理するという楽しみはなくなってしまうが、その辺はきっぱりと割り切ってしまうことで一層楽しみは倍増するだろう。

最後に

 管理釣場で釣った魚は持ち帰らない、という人が増えているようだ。養殖魚ゆえに生命力が強くはなく、一度ハリが掛かり釣り上げられた魚はすぐに死んでしまう運命にある。これらの死体は川底に沈んだり、流れ口に溜まったりする。こういうのを見るのはちょっと心苦しいし、魚達にも申し訳ない。人間の自己満足に過ぎないが持って帰って食ってやるのがやはり一番だろう。

■ニジマス…サケ科。北米大陸が原産で1877年に日本に移植された。陸封型と降海型とがありともに動物食。繁殖期に体側に現れる虹色の帯が名前の由来。英語名はレインボートラウト。降海型はスチールヘッドと呼ばれ、1mを越す大型もいる。急速に成長するドナルドソンという養殖品種もある。一部北海道などでは自然繁殖をしているが、大方は放流に頼っている。サーモンピンクの綺麗な身で、塩焼き、ムニエル、薫製、造り、寿司などで美味。
■ロッド:トラウト用の5フィート前後(約1.5m)のウルトラライトロッド。
細いラインを使うのでスローテーパー(胴調子)の方が力を吸収するのでよい。
■リール:小型のスピニングリール。ラインが細いのでドラグ性能の良いもの。ドラグ調整は事前にしっかりしておくこと。
■ライン:フロロカーボンの2〜3ポンド(約0.5〜0.8号)細ければ細いほどいいが、強度との兼ね合いが大事。
■ワーム:白系統のワームへの反応が一番良かった。これは飼料として白いペレットを与えられていたのではと矢野さんが推理している。フックは管付きマスバリ。ガン玉は軽く噛みつけないとラインが切れてしまう。