Web版つりのとも


森と川と釣人と
病める琵琶湖

佐藤哲男

 ふと岸を見ると、芦の生い茂る美しい湖岸。さらに上に目を遣ると新緑の比叡山、再び水面を見つめるともうウキが消えている。
 柔らかいハエ竿が弧を描き、丸まると太ったアメ色の本モロコが連で手元へとび込んでくる。

 その味も姿も天下一品の本モロコが半日で100〜300尾、しかも外道に小アユ、フナ、ヒガイ、ボテ(タナゴ)、スゴモロコなど多彩な顔ぶれに、竿の上げ下げの忙しいこと。しかしこれも過去の話です。
 春の使者、琵琶湖の本モロコ釣りも岸釣り、防波堤釣り、私は主に和船かボート釣りで楽しんだものです。

 しかも竿を2〜3本も並べて釣る本モロコ釣りも、今となってはすっかり過去形になってしまいました。当時の琵琶湖は青々とした水を湛え吸い込まれるような清水でしたが、湖岸にビルが目立ち始め開発が進んでからは、その水もどす黒さが増し、湖北においてさえもアオコが毎年発生するという。

 浜大津に在住する釣友の西村さん(元モロコ釣り報知名人)から時折届く、本モロコの南蛮漬けや釣況が途絶えて久しい。流友会の例会も中止になりました。
 琵琶湖の異変に気付きだしたのは、約10年ほど前。モロコ釣りの外道として嫌われモノのボテジャコが急に姿を消したのが始まりでした。魚の繁殖と水の浄化に必要な藻と芦が激減し、これに伴って真鮒とヒガイも少なくなりました。
 これにつれて本モロコの釣果も減少の一途を辿り、半日で100〜200尾が10〜30尾とじり貧。代わってスゴモロコ(砂地に棲む)の猛攻で本モロコ釣りもハイ、それまで。

 現在では生態系も大きく変わってしまい、大天敵のブラックバスのルアー釣りが大人気。漁協は網でブラックバスを捕ったり、持ち帰り釣りの大会を催したりとバス撃退対策に頭を悩ましている一方、バス釣り専用のホテルが建つ皮肉さ。
 今や琵琶湖本来の魚が激減し、これにとって代わって、ブラックバス、ブルーギルなどの外来種が爆発的に殖えている。本モロコに代わって97年度頃からワカサギの漁獲高が倍以上になったと言う。

 困ったことにこのワカサギ、友釣り党には頼みの綱である稚アユを食べてしまう。ワカサギが増えることによって、湖産アユが減るのではないかと心配する声が上がっている。
 それよりも問題なのが湖産アユの冷水病。今年の稚アユはすでに冷水病にかかり不漁という。
 今の友釣り界の不振は湖産アユの冷水病が最大の原因。

 先日も吉野川吉野地区漁協組合長の中川徹さんにお話を聞いたところ、湖産アユ不漁のニュースが伝わると、海産アユの値段が昨年の2〜3倍に値が上がって頭がいたい、とのことでした。
 いくら安いといっても冷水にかかったアユでは、養魚場のプールに入れてもすぐ死んでしまうという。ましてや川に放流しても放流しても消えてしまうようでは、川にお金を放しているようなもの。

 そこで、中川さんも昨年の12月から良いアユ種苗を求めて東奔西走しているそうです。また人工産アユの善し悪しは種アユ次第といわれる。それに加え和歌山県下の河川の天然アユも不調。
 ようやく琵琶湖でも冷水病研究班を結成して、その対策にのり出したところ。今や友釣り業界の盛衰も湖産アユ如何にかかっていることは言うまでもないでしょう。
 人間も自然も魚も健康な時ほどより健康に心掛けるべきではないだろうか。病気になってからではもう手遅れです。琵琶湖よ蘇れ!(大阪市在住)